2021 Fiscal Year Annual Research Report
免疫細胞上の機能分子の「着せかえ」による細胞動態の制御と癌の新規治療法の開発
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19K07634
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
伊藤 甲雄 東北大学, 加齢医学研究所, 助教 (90609497)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | トロゴサイトーシス / インテグリン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、細胞間接着に伴う新規表面分子の獲得(トロゴサイトーシス)におけるLFA-1インテグリンの役割を明らかにするために、研究を開始した。昨年度は、LFA-1はCD98を抗体で架橋することにより活性化が誘導され、T細胞トロゴサイトーシスが亢進することを示した。本年度は、トロゴサイトーシスにおけるLFA-1活性化の役割を詳細に検討するため、過去の報告に基づいて、ゲノム編集技術を用いた遺伝子改変により、恒常的にLFA-1活性化を示すマウスを作製した(LFA-1CA)。当初の予想に反して、このマウスにおいてはT細胞トロゴサイトーシスが著明に低下していた。昨年度、マウス悪性黒色腫B16F10の背部皮下接種により形成された原発巣から単離した腫瘍に浸潤したCD8 T細胞ではCD98の発現が増加することを明らかにした。これは、癌微小環境においてCD8 T細胞がCD98の発現が亢進することによって、インテグリンが活性化し、結果としてトロゴサイトーシスが誘導されている可能性を示している。そこで腫瘍浸潤CD8T細胞においてトロゴサイトーシスによって獲得した分子を探索した。その結果、腫瘍浸潤CD8T細胞ではCD80, CD86のタンパク質発現が亢進していた。これはmRNAの発現変化を伴っておらず、トロゴサイトーシス等の新規分子獲得が癌微小環境で起こっていることを示唆している。そこで、トロゴサイトーシスの低下が見られたLFA-1CAマウスにB16F10細胞を背部皮下接種した。その結果、野生型マウスと比較して癌の進展が抑制された。興味深いことにLFA-1CAの腫瘍浸潤T細胞では、CD80,86の発現上昇は認められなかった。これは癌微小環境において、トロゴサイトーシスを介して免疫抑制性の細胞が形成され、トロゴサイトーシスを標的とした癌における免疫抑制環境解除の分子標的になる可能性を示している。
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