2019 Fiscal Year Research-status Report
Molecular mechanisms of gene expression linked to chronic inflammation and hepatocellular carcinogenesis
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19K07642
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
鎌田 英明 広島大学, 医系科学研究科(医), 准教授 (10233925)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | NF-kB |
Outline of Annual Research Achievements |
肝臓の慢性炎症では組織特異的な機能遺伝子の発現が抑制されて機能障害が誘発される。また慢性炎症は肝発癌の基盤となる。我々はNF-kBのシグナル系遺伝子に改変を導入することにより、慢性炎症から肝硬変を自然発症するモデルマウス(TgΔIKKβマウス)を作成した。TgΔIKKβマウスは出生直後から肝小葉で広範なネクローシスが進行し、線維化の進展により肝硬変の病態を呈した。ところがジエチルニトロサミン(DEN)による化学発がん実験を行ったところ、肝細胞特異的IKKβ欠失マウスはHCCを高頻度に発生するのに対して、TgΔIKKβマウスではHCCの発生は低いレベルに抑えられていた。TgΔIKKβマウスの肝臓における遺伝子発現を解析したところ、DENを活性化するシトクロームP450(Cyp2E1)遺伝子発現が減少しており、この減少は肝小葉のゾーン3における肝細胞死が主な要因であることが判明した。さらに出生12日にCCl4で肝障害を誘発した後に出生13日でDENを投与して化学発がん実験を行った。このマウスでもゾーン3における肝細胞死が誘発されてCyp2E1の発現が減少し、HCCの発生は低いレベルに抑えられていた。従来は肝障害にともなう代償性細胞増殖が発癌のプロモーションのステップに作用することが知られていたが、本研究では炎症が遺伝子発現の改変を介して、イニシエーションのステップにおいても発癌を制御するこことが判明した。現在、発癌に連関した遺伝子発現制御の改変と、細胞死やエピゲノム制御の関係を解析している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
TgΔIKKβマウスを用いた解析により、肝障害と発癌の関係を解明することができた。さらに本研究を遂行する課程で、ネクロプトーシスと代謝連関による発癌・炎症の新たな関係を示唆するデータが得られつつある。研究は当初の計画以上の進展を見せている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究ではTgΔIKKβマウスを用いた解析により、肝発癌と炎症の連関について解析してきた。この過程で、ネクロプトーシスと代謝が連関することが見いだされた。今後はネクロプトーシスと代謝の連関による炎症の制御と、この制御が発癌にもたらす効果について解析してゆきたい。
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Causes of Carryover |
本研究計画の遂行に必要な資金の一部を、他の研究資金により充当したために、本研究資金の一部を次年度に使用することにした。
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