2020 Fiscal Year Research-status Report
ピロリ菌CagA誘発胃がんにおける極性キナーゼPAR1bの新規制御機構とその役割
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19K07660
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西川 裕子 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 特任研究員 (20583131)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ピロリ菌 / 胃がん / がんタンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではピロリ菌がんタンパク質CagAの標的タンパク質であるPAR1bキナーゼ多量体の制御機構および新規機能を解明することを目的としている。2019年度に確立した生化学的な手法を発展させ、2020年度はさらに詳細な生化学的解析を行なった。くわえて培養細胞を用いた実験系の確立を目指した。
2019年度はPAR1b組換えタンパク質を用いて多量体形成を促進し、PAR1bキナーゼ活性を増強する候補因子を数種特定した。そこで2020年度は、「PAR1bは候補因子のセンサーである」という仮説を立てた。まず、細胞内においても候補因子が機能するのかを検討し、候補因子の絞り込みを試みた。候補因子の産生を誘導する薬剤を培養胃上皮細胞に添加し、免疫共沈降法を用いて多量体形成への影響を調べた。予想に反し、多量体形成は促進されず、むしろ抑制されてしまった。また、薬剤処理した細胞から免疫沈降法で精製したPAR1bを試験管内キナーゼアッセイ法で解析しても、キナーゼ活性は増強していなかった。このことから、候補因子の分子間でなんらかの競合が起きていると考え、再び試験管内キナーゼアッセイ系を用いて候補因子を詳細に解析したところ、新たな特徴が浮かび上がってきた。このように生化学的に得られた結果をふまえ、候補因子を培養胃上皮細胞に導入してみたところ、興味深い知見が得られた。以上のことより、候補因子が細胞内においても機能していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
PAR1b組換えタンパク質を利用した生化学的手法は確立されており、本年度においても候補因子を絞り込む上で非常に有効であった。細胞を使った実験系の確立に時間を要したが、細胞レベルにおいても候補因子が機能している可能性を示す結果が得られており、今後の発展に期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
細胞レベルの実験系が確立したことから、これまでPAR1b組換えタンパク質を用いた生化学的な解析から得られてきた知見が本当に細胞レベルの現象を反映しているのか検証していきたい。培養細胞を用いて、PAR1b多量体制御機構、キナーゼ活性の増強、そして活性化型PAR1bの基質について検討を行い、PAR1b多量体の生物学的意義を明らかにしていく。その上で、ピロリ菌CagAがPAR1bを標的としている意義について考察したい。
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