2019 Fiscal Year Research-status Report
新規の乳癌発癌モデル系による発癌・進行メカニズムの解明と予防法の確立
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19K07665
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Research Institution | Foundation for Biomedical Research and Innovation at Kobe |
Principal Investigator |
伊東 潤二 公益財団法人神戸医療産業都市推進機構, その他部局等, 研究員 (10638844)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
笹沼 博之 京都大学, 医学研究科, 准教授 (00531691)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 乳癌 / 異形成 / Myc / E2 / イソフラボン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、マウスで、生理的な条件で乳癌を誘導できる新しい乳癌モデル系を構築し、初期の乳癌の特徴を明らかにすることを目的とした。また、乳癌発癌を抑える物質を同定し、新しい乳癌予防法を提案することを目的とした。 乳癌モデル系を構築するために、我々は、E2(女性モルモンのエストラジール)に着目した。そして、DNA修復能が低下しているscidマウスにE2を30日間連続投与した時に、初期の乳癌で見られる乳管の形態異常(乳腺上皮細胞と筋上皮細胞の二相性の消失、乳管内での乳腺上皮細胞の無秩序な増殖、間質に微小浸潤した乳腺上皮細胞、基底膜の断裂)を観察した。乳腺上皮細胞の増殖頻度の上昇も観察した。 乳管の形態異常の分子メカニズムを明らかにするため、E2の制御下の遺伝子群の発現を調べた。その結果、癌原遺伝子Mycの発現が高まっていることを明らかにした。さらに、Mycの阻害剤で、乳腺上皮細胞の増殖と、乳管の形態異常を抑えることができた。これらの結果から、DNA修復能の低下+E2連続投与→Mycの発現増大→乳腺上皮細胞の増殖→形態異常というメカニズムを明らかにした。 本モデル系で、乳癌発癌を抑える物質を評価できるかを検証した。検証には、疫学研究で乳癌予防効果が示唆されているイソフラボン類(エクオール、ゲニステイン)を用いた。そして、E2と同時にイソフラボン類を投与することで、乳管の形態異常が抑えられた。これは、イソフラボン類の乳癌予防効果を初めて実験で示したものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的の1つである、新規の乳癌モデル系の構築が完了した。そして、それにより、乳癌発癌のメカニズムを1つ明らかにした。また、乳癌予防の候補物質について、イソフラボン類の予防効果の知見を得た。そして、それらの結果を統合し、学術雑誌(査読あり)で発表した。そのため順調に進んでいると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、本モデル系で観察される乳管の形態異常がどのように起こるのかを研究する。そのために、組織切片で、乳癌マーカーや癌微小環境マーカーで免疫染色を行い、分子・細胞レベルでどのような変化が起こっているのかを明らかにする。 さらに、乳癌の予防について、イソフラボン類以外の物質の探索・検証を行う。 本研究で得られる知見は、乳癌の予防・治療に貢献するものである。
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