2020 Fiscal Year Research-status Report
新規の乳癌発癌モデル系による発癌・進行メカニズムの解明と予防法の確立
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19K07665
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Research Institution | Foundation for Biomedical Research and Innovation at Kobe |
Principal Investigator |
伊東 潤二 公益財団法人神戸医療産業都市推進機構, その他部局等, 研究員 (10638844)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
笹沼 博之 京都大学, 医学研究科, 准教授 (00531691) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 乳癌 / 異形成 / 微小浸潤 / 発酵大麦エキス |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に構築した新しいマウス初期乳癌誘導系を用い、以下の研究を進め、結果を得た。 1)悪性化した乳癌ではマクロファージが関わることが知られているが、初期乳癌での知見は得られていなかった。マウス初期乳癌誘導系で乳腺組織に存在するマクロファージを調べた結果、乳管の異形成ができる時に、マクロファージが乳管内に侵入していることをみつけた。その時に、乳腺上皮細胞で、マクロファージを誘引するケモカインの発現(mRNA)が上昇していることを明らかにした。さらに、そのケモカインの効果を薬剤で阻害した結果、乳管の異形成が抑えられた。これらの結果は、初期乳癌の形成にマクロファージが関わっていることを初めて実験的に示したものである。 2)初期乳癌を抑える物質を探索するために、食品素材の検討を行った。発酵大麦エキスを8%含む水を与えた時に、初期乳癌の間質側への微小浸潤が抑えられた。また、その時に、細胞外マトリクスを分解するマトリクスメタロプロテイナーゼの活性が低下していることを明らかにした。微小浸潤は乳癌の転移の最初の段階であることから、本研究の結果は、発酵大麦エキスで転移を予防できる可能性を示している。 3)マウス初期乳癌誘導系で、新規の発癌物質候補をみつけた。その分子レベルでの効果を調べるために、乳癌細胞株の3次元培養を行った。そして、その発癌物質を抑えた時に、表現型が正常化することをみつけた。さらに詳しく調べるために、そこからRNAサンプルを抽出し、RNA-seqを行い、新規の発癌物質の影響で変動する遺伝子のリストを得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度に構築した実験系を発展させ、初期乳癌のメカニズムに関する新しい知見を得た。また、新規の乳癌抑制物質(発酵大麦エキス)をみつけた。発酵大麦エキスについては、論文が受理された。そのため、順調に進んでいると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
別の新しい初期乳癌抑制物質の候補を得ている。それについて、メカニズムの解析を行い、乳癌の特徴の理解と乳癌予防に貢献する知見を得る。具体的には、培養細胞系でその物質がどのような作用を有しているかを見極め、網羅的解析などで作用機序を明らかにする。
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Causes of Carryover |
購入を予定していた消耗品(海外製品)が納期未定となり、その額が次年度使用額となった。 代替品を検討し、その購入に使用する。
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