2021 Fiscal Year Research-status Report
大腸がんにおけるヒト内在性レトロウイルスの発現解析と機能解明
Project/Area Number |
19K07666
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
青井 三千代 (小柳) 神戸大学, 医学部附属病院, 特命助教 (90432327)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中川 草 東海大学, 医学部, 講師 (70510014)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | ヒト内在性レトロウイルス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、(1)大腸がんにおいて高発現しているヒト内在性レトロウイルス領域を長鎖シークエンスによって同定し、(2)同定した領域を大腸がん細胞株あるいは人工大腸がん幹細胞、大腸がんオルガノイドでノックダウンあるいは強制発現させることで、細胞の機能に影響を与える領域を見出し、(3)がんにおけるヒト内在性レトロウイルスの新しい機能を解明することである。 昨年度は、前年度に引き続き、これまでに行った大腸がん臨床検体のがん部3検体、非がん部2検体の長鎖、短鎖シークエンスの解析結果の比較から同定した、大腸がんにおいて高発現するヒト内在性レトロウイルス領域の3領域に着目して実験を進めた。 まず、同定した3領域由来の転写物の発現の有無を、複数の大腸がん臨床検体由来のcDNAパネルを用いて調べた。また、大腸がん臨床検体のがん部由来のcDNAから発現領域を同定し、その配列を元にタンパク質に翻訳される可能性のあるORFを含む領域の強制発現ベクターを作成、細胞に導入して細胞内での局在や増殖を調べた。また、一部のORFに対するポリクローナル抗体を複数作成した。 さらに、同定した3領域のうちの1領域については、大腸がん細胞株を薬剤排出能の違いで細胞集団を分けた際に、特定の細胞集団で高発現していることを明らかにした。この結果は、ヒト内在性レトロウイルスの新たな機能を明らかにする上で重要な実験結果であると考えている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
大腸がん細胞株の特定の細胞集団にのみ発現するヒト内在性レトロウイルス由来の領域を同定できたことは、大きな進展である。 しかしながら、目的の翻訳産物に対する抗体を複数作成したものの、目的のタンパク質を正確にdetectできる抗体を得ることができず、細胞内での局在や、臨床検体での免疫染色による発現解析などの実験を進めることができていないことは一つの課題である。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究最終年度では、引き続き、同定したヒト内在性レトロウイルス領域の強制発現やノックダウンにより、同定した領域由来の翻訳産物の機能解析を行うと共に、作製した抗体を用いて、細胞内での局在や、複数のがん臨床検体における発現の有無と予後の関係を調べる予定である。 また、大腸がん細胞株の特定の細胞集団での発現の意義について、同様に強制発現、ノックダウンと網羅的な遺伝子発現解析の比較から明らかにする予定である。
|
Causes of Carryover |
抗体作製に予想以上に時間がかかったこと、新型コロナウイルスの影響、他業務との兼務など複数の事情により、予定通りに実験を進めることができなかったため。
|