2019 Fiscal Year Research-status Report
グリオーマ幹細胞が形成するニッチの成立機構解明と阻害方法の確立
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19K07671
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
サンペトラ オルテア 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (50571113)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | グリオーマ幹細胞 / 悪性グリオーマ / がん幹細胞ニッチ / 自律性ニッチ |
Outline of Annual Research Achievements |
幹細胞はニッチと呼ばれる特殊な微小環境の中に存在する。ニッチは癌幹細胞の性質維持に不可欠であることから、その機能阻害は癌幹細胞を根絶させる方法として注目されている。治療後半年以内に致死的な再発を引き起こす膠芽腫において、血管や低酸素領域がグリオーマ幹細胞(Glioma stem cell, GSC)にとってニッチになりうることが報告された。しかし、ニッチの実態が充分に解明されておらず、有効な阻害方法も確立されていない。 これまでの研究で、GSCが血管近傍及び低酸素領域以外にも生存しうること、そして、一部のGSCが自らもニッチ因子を分泌し、ニッチを構築しつつ腫瘍塊を形成しうることを見出した。本研究ではGSCニッチ阻害療法の確立を最終目標とし、GSCが構築する自律性ニッチ(GSC autonomous niche, GAuN)ニッチの成立条件、性質及び構成成分を明らかにし、さらに、その制御因子を同定することを目指している。令和元年度では主に3つの解析を行った: 1.GAuNの構成成分解析:すでに樹立していた、自律性の高いマウスGSCを用いて、その分泌プロファイルを解析した。その結果、GSCは自ら自己複製能を促進する増殖因子を分泌し、さらに、血管内皮細胞、免疫細胞の増殖、遊走を促進する因子、細胞外マトリックスのリモデリング関連因子を分泌していることを明らかにした。 2.GAuNの制御因子解析:GSCの遺伝子発現解析を行い、さらにGSCのin vitroでの自己複製能維持に必要不可欠因子の探索を実施した結果、REDOX関連因子がGAuNの重要な制御因子であることを見出した。 3.GAuNの可視化:自立性の高いGSCをマウスの前脳に移植し、腫瘍を形成させた。培養脳切片のリアルタイム・イメージングより、GSCが腫瘍塊と離れた正常脳まで微小環境を変性させ、新しいニッチを形成することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
GAuNの構成成分解析ではGSCが分泌する主な増殖因子、微小環境変性因子の同定に成功した。また、制御因子解析ではREDOX関連因子がGAuN維持のために必須であることを見出し、因子の絞り込みに成功した。さらに、GAuNを可視化したことによって、GSCが正常脳に及ぼす影響を時間的・空間的に捉えることができ、その過程の記録に成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度ではGAuNの構成成分解析、GAuNの制御因子解析及びGAuNの可視化を継続する。さらに、GAuN制御因子の機能解析、標的因子の同定及びGSCの阻害方法の確立を目指す。具体的には以下の解析を実施する。
GAuN制御因子の機能解析及び標的因子の同定:令和元年度で同定した因子の発現・機能抑制を誘導し、a) in vitroのGSC自己複製能阻害効果、b) ex vivo, in vivoのGSC腫瘍形成能への効果を検証する。遺伝子改変、ゲノム編集あるいは阻害剤投与によってGSCの生存、腫瘍形成能が著しく低下した細胞を単離・解析し、GAuNの阻害標的因子を同定する。
GSCの阻害方法の確立:前項目の解析より浮かび上がったGAuNの標的因子に対し、薬剤あるいは抗体を用いた阻害方法を検討する。また、血管性ニッチ、低酸素領域ニッチに対し血管新生抑制剤、低酸素領域を改善させる薬剤を使用し、併用効果を検討し、GSCニッチ阻害療法の前臨床試験の準備を整える。
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Research Products
(3 results)