2019 Fiscal Year Research-status Report
がんと概日リズムの関連から同定した新規がん制御機構の解析
Project/Area Number |
19K07675
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Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
三木 貴雄 関西医科大学, 医学部, 講師 (30452345)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | がん抑制遺伝子 / Rb / 概日リズム |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者らは、がんの新しい分子標的薬を開発するために、がんと概日リズムという新たな関連を題材とすることにより、これまでに無いがん制御機構の同定を目指している。近年の大規模疫学研究によると、シフトワーク従事者(看護師、パイロット)は、がん罹患率が有意に上昇することが報告された。また、正常な概日リズムが保てないPeriod2欠損マウスは癌になりやすいことが報告されている。このことは、がんと概日リズムの密接な関連性を示唆しているが、その分子機構は不明な点が多い。申請者らは、これまでにがんと概日リズムの関連について研究を行い、がん抑制遺伝子p53及びPMLと概日リズムが直接分子レベルでクロストークする機構を明らかにしてきた(EMBO J. 2012, Nat Commun. 2013, Sci Rep. 2016)。本研究課題では、概日リズムの制御因子としてのヘムに着目した。これまでの報告で、ヘムタンパク質の補欠分子族であるヘムは概日リズム遺伝子PER2やREV-ERBsのリガンドとなりその活性を制御することが報告されている。最近申請者らは、がん抑制タンパク質Rbの遺伝子欠損マウスではPER2のヘム結合が過剰となり、概日リズムが異常となることを見出した。この結果は、Rbが標的とヘムの結合を変化させることで標的の機能を制御することを示唆している。そこで申請者らは、Rbによるヘム制御が、これまで報告されているRbによる細胞周期や細胞分化、代謝といった標的制御機構にどれほど寄与しているかを、網羅的遺伝子発現解析法(CAGE法)を用いて検討した。その結果、Rb経路の約3割がヘムを介して制御されている可能性を示唆するデータを得た。そこで、CAGE法により得られた網羅的結果を詳細に解析し、Rbによるヘムを介した標的制御経路を同定し、がんの創薬につなげることを目的とし、研究を推進している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上述したCAGE解析の結果は、がんでよく見られるようなRb欠損による表現型の一部がヘム制御異常を介して生じている可能性を示唆しており、新規薬剤標的経路を探索するための良い系であると考えられる。 そこで申請者らは、現在までに明らかになっているRb制御経路のうち、解糖系経路がヘム制御依存性である可能性を検証するために、以下のような実験計画を立案した。最初のアプローチとして我々は、Rb欠損の表現型がヘム合成阻害剤によりレスキューされるかどうかを検討した。近年のRbと代謝に関する研究から、Rb欠損によりミトコンドリアの遺伝子発現が制御されていることが報告されている(Jones et al., 2016)。そこで我々は野生型のMEF細胞にRb shRNAを導入した細胞の代謝活性を細胞外フラックスアナライザーxfpを用いて計測し、そのRb欠損表現型をヘム合成阻害剤によりレスキューを試みた。 その結果、Rbのdownregulationにより酸素消費速度(OCR)と細胞外酸性化速度(ECAR)共に減少が見られた。そこで、ヘム合成阻害剤を作用させたところ、僅かであるがレスキューがみられたが、統計的に有意な差は見られなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
以前の報告から予想される結果は、Rb欠損では増殖活性の上昇が観察されると期待され、OCR、ECAR共に減少することは考えにくいが、今回の我々の条件では、RbのdownregulationによりOCR、ECAR共に減少がみられていたことから、Rbのacuteなdownregulationにより細胞障害が起きていることでヘム合成阻害剤のみではレスキューされなかった可能性が考えられる。そのため、今後は別の方法(KO細胞、CRISPR)、表現型(細胞周期異常、分化異常)について、仮説の検討を行う計画である。
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Causes of Carryover |
研究結果が当初の予想とは異なる結果を得て、思ったとおりに進行しなかった。次年度に別の方法(KO細胞、CRISPR)、表現型(細胞周期異常、分化異常)を用いて仮説の検討を行う計画である。
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Research Products
(2 results)