2021 Fiscal Year Annual Research Report
上皮間葉移行とフェロトーシス感受性により規定されるRAS変異癌の悪性化と脆弱性
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19K07680
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
松本 光代 東北大学, 医学系研究科, 助教 (80400448)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | BACH1 / Ferroptosis / Cancer |
Outline of Annual Research Achievements |
我々はこれまでの研究において、BACH1高発現膵臓癌細胞株であるAsPC-1細胞がBACH1低発現膵臓癌細胞株であるPanc-1細胞よりもフェロトーシス誘導剤であるエラスチンへの感受性が高いこと、さらに、AsPC-1細胞のBACH1をノックダウンすると、フェロトーシス誘導剤への感受性が低下することを見出している。そこで、BACH1の過剰発現によってPanc-1細胞のフェロトーシス誘導剤への感受性を促進させることができるか調べた。tet-onシステムを用いてBACH1を過剰発現できるPanc-1細胞を構築し、BACH1を過剰発現させた。しかし、Panc-1細胞におけるBACH1の過剰発現はフェロトーシス誘導剤の感受性に影響を与えなかった。フェロトーシスはその名前の通りに鉄に依存した細胞死であり、鉄をキレートするとその細胞死は抑制されることが知られている。BACH1は複数の鉄代謝関連遺伝子の転写を制御しており、BACH1による細胞内遊離鉄の増加がフェロトーシス誘導剤への感受性を上げる要因の1つであることが考えられる。興味深いことに、AsPC-1細胞ではフェロトーシス誘導剤と一緒に鉄剤(FeSO4)を添加すると、鉄剤を加えていない対照と比べ生細胞数が減るのに対し、Panc-1細胞ではフェロトーシス誘導剤を鉄剤と同時添加しても生細胞数に変化が無いことが分かった。これらの結果は、フェロトーシス制御機構を利用した癌治療戦略を考える上で、各細胞内の鉄の代謝機構の違いについてさらに研究を深める必要性を示唆した。また、本年度は、これまでに報告された癌細胞におけるBACH1の機能を総説にまとめ報告した(J Biol Chem. 2021 297:101032)。
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