2020 Fiscal Year Research-status Report
Dynamics of GMN cancer cells: Synergistic effect on cancer malignant alteration by CAF
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19K07681
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
伊藤 剛 秋田大学, 医学系研究科, 助教 (60607563)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 細胞分裂 / 染色体分配 / 細胞質分裂 / 癌関連線維芽細胞 / CAF / 染色体不安定性 / ゲノム不安定性 / 浸潤 |
Outline of Annual Research Achievements |
癌化学治療後の再発や悪性化のメカニズムはわかっていない。治療後の癌患部では、多核・巨核であるGMN癌細胞が高頻度で観察される。GMN癌細胞が増殖する時には高いゲノム異常が発生し、癌悪性化に有利な多様性を獲得する。一方、癌細胞は線維芽細胞を教育し、CAF(癌関連線維芽細胞)へ変化させ、癌浸潤を促進するがん微小環境を構築する。 本研究では、GMN癌細胞と間質細胞の相互作用が癌悪性化につながるという新規な癌システムを想定し、検討を進めている。これまでに、ヒト腫瘍細胞において多核・巨核とできる癌細胞株の特定やライブセルイメージングによる染色体や不等分裂のトラッキングを進めてきた。マイクロアレイによる差異解析により、GMN細胞における遺伝子の発現上昇を検討した。間質のCAF(癌関連線維芽細胞)培養上清の刺激により、GMN細胞における増殖・移動・浸潤能が促進させることを明らかとした。また、GMN癌細胞をマウス口腔内や皮下へ移植すると、線維芽細胞の著しいCAF 化を伴い癌浸潤が加速する新たな現象を見つけた。これはGMN癌細胞のゲノム異常(ミクロ変化)と癌細胞を取り巻くCAFの動員(マクロ変化)が連動し、癌進展にシナジー効果を持つ事を意味する。 本課題では、これまで動態が不明であったGMN癌細胞とCAFの連動した癌悪性化の分子メカニズムを引き続き明らかにしていく。その分子基盤から、GMN癌細胞を多く含む化療後の再発や増悪を防ぐ創薬の医療応用に繋がると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マイクロアレイ解析により、GMN細胞において約200遺伝子の発現上昇が認められた(コントロールの単核癌細胞と比較して)。このうち、サイトカインや癌細胞の増殖・移動に働く癌関連因子について注目した。qPCRによって、遺伝子発現の検証を進めた結果、間質細胞(線維芽細胞・マクロファージージ・好中球など)の誘引に重要とされるサイトカインの大幅な発現上昇(>10倍)や12種類の癌関連遺伝子の発現上昇がGMN細胞で確認された。パスウェイ解析により、癌悪性化に関与する新規シグナル経路の体系化を進めている。生体内におけるGMN癌細胞の重要な性質として、GMN癌細胞をマウス皮下へと移植した結果、増殖して腫瘍形成できることが確認できている。
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Strategy for Future Research Activity |
1. GMN癌細胞由来のサイトカインのがん微小環境に与える影響および、2. GMN癌細胞で発現する癌関連遺伝子が癌促進に与える影響を調べる。1. 2 のシナジー効果で現れる癌亢進メカニズムについて検討する。 がん微小環境に与える影響について、GMN癌細胞とCAFを始めとする間質細胞との相互作用を明らかにしていく。本研究で特定したサイトカインは間質細胞の誘引や移動に働くことが報告される因子であり、間質細胞を介したGMN癌細胞による腫瘍促進に働くことが期待される。方法として、GMN癌細胞の培養上清により正常間質細胞を刺激した後、間質細胞の遺伝子発現プロファイルの変化をqPCRで追跡する。この変化が単核の癌細胞やGMN癌細胞におけるサイトカイン産生阻害でも生じるか検討する。In vitroで認められたGMN癌細胞と間質細胞の細胞間応答が生体内でも存在するかマウス生体内やヒト癌病理組織標本を用いて調べていく。これまでに、マウス皮下におけるGMN癌細胞周辺でのマウス由来CAFの集積を確認できている。 GMN癌細胞で細胞分裂による増殖や浸潤が観察された。特定した癌関連遺伝子が増殖や浸潤に与える影響を解析する。ライブセルイメージングやFISH法により染色体異常の解析を進めることで染色体不安定性について検討する。また、関連遺伝子の機能阻害による浸潤抑制について評価することで癌悪性化との関係を明らかにする。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由として、サンプル抗体と購入の併用によって抗体購入予算を抑えたことが挙げられる。 次年度では、GMN細胞が産生するサイトカインがどのように間質細胞へと作用し、がん微小環境へと影響を与えるかを検討する。また、本研究で特定した12種の癌関連遺伝子に注目し、未知であるGMN癌細胞の癌亢進に対する性質を明らかとする。サイトカイン・候補遺伝子の発現を検知する抗体、stealth RNAiを用いた目的遺伝子の発現抑制による表現型解析、およびシグナル経路の特定や遮断(in vitro, in vivoの両系で)にとって必要な阻害剤の予算を想定している。
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Research Products
(3 results)