2021 Fiscal Year Annual Research Report
腸内細菌叢解析に基づいた成人T細胞白血病(ATL)発症機構の解明
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19K07693
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
中畑 新吾 鹿児島大学, 医歯学域ヒトレトロウイルス学系, 教授 (80437938)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 成人T細胞白血病リンパ腫 / 腸内細菌叢 |
Outline of Annual Research Achievements |
成人T細胞白血病 (ATL)は、ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)感染以降、数十年の潜伏期を経て発症する予後不良の血液腫瘍である。ATL細胞は、制御性T(Treg)細胞の性質を持つことから、免疫抑制作用を示すことが指摘されている。ATL発症の危険因子としては、性別、年齢、HLAハプロタイプなどが報告されているが、ATLの発症や憎悪に関わる宿主側の環境因子については未だ不明な点が多い。腸内細菌叢は、ヒトの最大の寄生生物であり、全身の免疫調節にも重要な役割を担っている。そこで我々は、宮崎県と鹿児島県においてHTLV-1キャリア、ATL患者の糞便サンプルを収集し、次世代シーケンスによる腸内細菌叢解析を遂行、宿主因子としての可能性を検討した。バイオインフォマティクス解析は、東京工業大学山田拓司博士の協力のもと実施した。16S r DNA解析から、健常者と比較してATL患者群やキャリア群で有意な増加を示す細菌群を同定した。ATL患者群に有意に増加する細菌の中で、腫瘍マーカーであるsIL2Rと正に相関する細菌群を抽出した。さらに、キャリア群で増加した細菌のうち、HTLV-1プロウイルス量と相関する細菌群を同定した。中でも、酪酸を産生することが知られている細菌がATL患者で有意に増加しており、これらはプロウイルス量や腫瘍マーカーとも相関することがわかった。酪酸は、Treg細胞の増殖を促すことが知られていることから、HTLV-1感染Tリンパ球やATL細胞の増殖刺激となることが推測される。以上の結果から、特定の腸内細菌叢の変化がATLの病態形成に関わる可能性が示され、今後の更なる研究展開が期待できる。
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