2021 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of Rho paradox aiming at development of molecular target drug.
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19K07695
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
荒木 智之 埼玉医科大学, 医学部, 講師 (40438825)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 知史 早稲田大学, 国際学術院, 教授 (60519320)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | Rhoタンパク質 / small GTPase / がん / 分子標的薬 / がん細胞の浸潤 / がん細胞の転移 |
Outline of Annual Research Achievements |
RAS遺伝子群は真核生物内で広く且つ高度に保存された低分子GTPaseであり、悪性度の高いがん腫において高頻度に変異が認められる。このRAS遺伝子ファミリー の一種であるRho遺伝子は細胞骨格の制御に中心的な役割を果たし、これの変異は細胞の形態形成や細胞内の物質輸送を制御することでがんの浸潤や転移を活性化させることがわかっている。近年、がん治療を目的としたRhoタンパク質の阻害薬の開発が望まれているが、世界規模での精力的な取り組みにも関わらず、有効な薬剤は見つかっていない。その理由の一つが、「Rhoタンパク質は活性化しても不活性化してもがんが悪性化するという」ユニークな動態を示すことにある。本研究は、がん細胞におけるRhoタンパク質のこの不可解な性質を明らかにすることにより、新規の抗がん剤(分子標的薬)の開発に寄与しようとするものである。 我々は、「機能欠失を起こしたRhoタンパク質シグナル伝達系の下流因子が、別のRhoタンパク質ファミリーのシグナル伝達経路に働きかけて機能を活性化する」 というモデルをたてて研究を進めている。このモデルを実証するため、様々なRhoタンパク質の変異体を作成し、解析を行ったところ、これまで報告のない一つの有力な変異遺伝子を取得した。この遺伝子変異をもつRhoタンパク質を培養細胞内に発現させたところ、細胞の異常な伸長を認めた。この変異はRhoの活性化型変異と推察されるが、これまでこのような形態変化を引き起こす遺伝子変異は知られていない。次に、この形態変化を引き起こすRhoタンパク質の機能を明らかにするため、変異型Rhoタンパク質の結合因子をの単離を試みた。その結果、野生型Rhoタンパク質に比べ、変異型Rhoタンパク質に強く結合する因子の候補を複数得た。現在、この因子について解析を進めているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究には変異型Rhoタンパク質を安定的に発現する細胞が必要だったため、その取得を試みたが、期待される発現レベルを維持できる細胞株の取得に時間がかかり、解析に到達するまでに時間を要した。また、Rhoタンパク質の結合因子の解析には大学間研究ネットワークに所属する研究設備を使わせて貰う予定だったが、システムダウンによる解析の遅れが生じたため、予定より多くの時間を要した(半導体不足によるシステム回復の遅延が起こったと聞いている)。現在は上記の解析が終了し、タンパク質間ネットワークの解析を行っているが、研究に必要な試薬の到達に予想以上の時間がかかっている(特に輸入品の試薬について)。これらの試薬の到着を待って研究を再開する予定である。 また、新規にがん細胞の浸潤や転移に関わる可能性のあるエピジェネティック変化について、主にRho(Ras)タンパク質を中心に解析をおこなう準備を進めている。これは現在、情報を収集している段階である。また、RNA-seq.による遺伝子発現解析を行うための準備を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
変異型Rhoタンパク質の解析、及び、その関連因子の解析については現行の方針を継続していく予定である。研究の推進に必要な器具、試薬等の遅れが続いているが、手に入りやすい代替品に切り替えるなどして研究に遅れが生じないよう工夫する。 特に悪性度の高いがん細胞は浸潤・転移が盛んであるという特徴を有する。これらの表現型を示すものはRho(Ras)タンパク質などの細胞骨格関連因子(特には制御因子)の変異が起こっていることが多いと推測される。これらの異常を分子レベルで解明するため、「DNAのエピジェネティック変異」とそれによって引き起こされる「遺伝子発現の変化」の解析を行う予定である。この両方の解析をおこなうため、解析のサンプルや試薬の準備、また解析ソフトウェアの準備を行っており、準備が整い次第解析を開始する予定である。
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Causes of Carryover |
当該年度において学会参加を想定していたが、コロナ禍によって研究が思うように進まず、発表することができなかったためである。また、論文投稿を計画していたが、上記と同様の理由により遅れが生じている。 次年度においては、これまでより精力的に研究を進めるため、予算は研究遂行に必要な消耗品(分子生物学実験に必要な試薬・プラスチック製品、タンパク質 関連試薬)の購入、及び、外注を予定しているタンパク質解析・遺伝子発現解析費用に充填する予定である。
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