2020 Fiscal Year Research-status Report
RNAのメチル化修飾がスキルス胃がんの転移で果たす機能の解明
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19K07698
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Research Institution | Aichi Gakuin University |
Principal Investigator |
原 敏文 愛知学院大学, 薬学部, 助教 (80456219)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
武井 佳史 愛知学院大学, 薬学部, 教授 (70362233)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 癌転移の分子機構 |
Outline of Annual Research Achievements |
癌の転移は、癌死の主要な原因である。近年、免疫療法を筆頭とした新しい癌の治療法が確立する一方で、癌転移を直接標的とした癌の治療法は開発されていない。その主な原因は、癌転移の分子機構の全貌が解明されていないことにある。そこで、申請者らは、これまでにスキルス胃がんの転移細胞モデルを用いて、癌転移の分子機構の解析を進めてきた。その研究の中で、RNAのメチル化酵素METTL3の発現が転移能獲得に伴って上昇することを見出した。METTL3は、細胞内で最も豊富に存在するRNAメチル化修飾であるm6Aの生成に関わる。そこで、高転移能を有するスキルス胃がんの細胞株で、METTL3のノックダウン(KD)細胞を作成し、細胞機能の変化を検討した。METTL3-KD細胞では、細胞内の全体的なm6Aレベルが低下すると共に、細胞の遊走能が大きく低下することを見出した。これら結果は、癌転移においてm6Aが重要な役割を果たすことを示唆している。そこで、癌転移におけるm6Aの役割を明らかにするため、高転移能を有するスキルス胃がんの細胞モデルにおけるm6Aの存在箇所について、次世代シークエンサーにより抗m6A抗体を用いた免疫沈降サンプルの網羅的な探索を試みた。その結果、高癌転移能を有する細胞株選択的に存在するm6A部位を見出した。また、これまでにm6A修飾されることが知られる遺伝子を本実験でも検出することが出来たことから、免疫沈降から次世代シークエンサーのライブラリ作成、および次世代シークエンサーの解析結果に関する情報解析が適切に行われていることが確認できた。そこで、これら結果を基に、次年度はm6A修飾の制御システムの構築を行い、転移選択的m6A修飾が果たす細胞内機能についての役割を明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の主目的であった次世代シークエンサー(NGS)によるm6A修飾遺伝子群の解析が良好に行われた。NGSの情報解析は発展途上の分野であり、複数の解析プログラムを検討した結果、既知のm6A修飾される遺伝子群を検出するとともに、転移選択的にm6A修飾される遺伝子を複数同定することができた。これら転移選択的なm6A修飾が、癌転移においてどのような役割を果たすかについて明らかにすることが、次年度以降の大きな課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度、転移選択的にm6A修飾される遺伝子を複数同定したが、これらm6A修飾が癌転移においてどのような役割を果たすかは不明である。興味深いことに、今回の解析結果には、これまで癌転移で機能することが知られていない遺伝子も含まれている。そこで、次年度はm6A修飾を生細胞で可逆的に制御するツールを作成し、m6A修飾が変動した際の細胞機能が変化するか否かを検討することで、m6A修飾が癌転移で果たす役割の一端について明らかにすることを目指す。
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Causes of Carryover |
一部実験のための消耗品の購入を予定していたが、コロナウイルス蔓延の影響により納期に時間がかかることが判明し、次年度に購入することにしたため、次年度使用額が生じた。次年度の早い時期に、購入を予定している。
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