2020 Fiscal Year Research-status Report
MIT/TFEファミリー変異がんにおけるエンハンサーリプログラミングの意義
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19K07702
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Research Institution | Japanese Foundation for Cancer Research |
Principal Investigator |
田中 美和 公益財団法人がん研究会, がん研究所 発がん研究部, 研究員 (70345883)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | スーパーエンハンサー / 骨軟部腫瘍 / 融合遺伝子 / エンハンサー / ASPL-TFE3 / 胞巣状軟部肉腫 / MIT/TFEファミリー / エピゲノム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は、MIT/TFE ファミリー変異がん(胞巣状軟部肉腫(ASPS)、腎細胞がん(RCC)、悪性黒色腫)を対象疾患とし、 先進的エピゲノムランドスケープ 解析を行うことにより、ファミリー分子の変異によって生じるエンハンサーリプログラミングと発がん機構を明らかにすることである。 ASPSは主にAYA世代に発生する高転移性のがんである。ASPSの生体内での維持と転移には、腫瘍と血管の密接な相互作用が不可欠であるが、既存の抗がん剤やVEGF阻害剤の効果が乏しいことから、ASPSでの血管形成機構の解明が治療開発に最重要であると考えている。ASPSは全症例で融合遺伝子(ASPL-TFE3: AT3)の形成があり、これが発症原因である。これまでの我々の研究から、ASPSの血管新生はペリサイトを裏打ちしており、一般的ながんの血管新生とは異なること、AT3の発現を抑制すると造腫瘍能を完全に失うこと、AT3の発現が血管関連遺伝子を制御するスーパーエンハンサー(SE)の形成に深く関わる結果を得ている。このことから、血管形成を規定するSEの同定とその標的遺伝子の発現抑制が治療開発に繋がると考えている。 そこで最終年度は、AT3とエンハンサーとの特異的な相互作用、特にASPSの特徴である血管形成機構を明らかにすることで、発がんや血管新生の責任分子を標的とした治療法開発のシーズ獲得を目指した。具体的には、CRISPRエピゲノムスクリーニングにより、AT3が制御する発がんに必須なSEとその標的遺伝子を同定し、それらがASPSの発症や血管形成、転移においてどのような役割を担っているのかをマウスモデルとマイクロ流体デバイスを用いて解析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1. CRISPR-dCas9スクリーニングにより血管形成を規定するSE及び標的遺伝子を同定 原因融合遺伝子ASPL-TFE3 (AT3)を欠如したASPS細胞では、約500のスーパーエンハンサー(SE)が消失または縮小する。そこで、AT3の有無により変化するSEに対してsgRNAライブラリーを設計し、CRISPR/dCas9-KRABを用いてエピゲノムスクリーニングを行い、血管形成に必要なSEをin vivoの腫瘍形成を指標としてSEを同定し、その標的遺伝子7つを抽出した。 2. モデルマウスとマイクロ流体デバイスで発がんと血管形成の責任遺伝子を評価 1で抽出した発がんに重要なSEの標的遺伝子について、我々が開発したマウスモデルで検証を進めた。遺伝子ノックアウトしたASPS細胞をマウスに移植して腫瘍形成、血管新生、転移能を評価している最中である。 並行して、SE標的遺伝子の生物学的機能と血管新生能をマイクロデバイスを用いた3次元培養系で評価を進めている。遺伝子ノックアウトしたASPS細胞の血管形成能を定量的に評価するとともに、阻害剤のスクリーニングに対応するハイスループット化に向けたデバイスの改良は今後の課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
1. SEの標的遺伝子に対する阻害剤を検証し治療薬開発のシーズを獲得 SE標的遺伝子に対する阻害剤が存在するものは、マウスモデルとマイクロ流体デバイスを用いて評価する。SEを広範囲に阻害するBRD4阻害剤のJQ1は、ASPSマウスの腫瘍内血管新生を抑制して腫瘍の増大を抑えることから、本課題で得られた阻害剤とJQ1との比較も行う。さらに、ASPSと腎細胞がん(RCC)は組織像や血管形成能が類似しており、ChIP-seq解析によってSEやエンハンサー領域に共通性を認める知見を得ているので、RCCでの阻害剤の適応も検討する。 2. 研究成果の発表 早期に論文としてまとめて発表する。
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Research Products
(9 results)
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[Journal Article] Identification of Novel Fusion Genes in Bone and Soft Tissue Sarcoma and Their Implication in the Generation of a Mouse Model2020
Author(s)
Yasuyo Teramura, Miwa Tanaka, Yukari Yamazaki, Kyoko Yamashita, Yutaka Takazawa, Keisuke Ae, Seiichi Matsumoto, Takayuki Nakayama, Takao Kaneko, Yoshiro Musha, Takuro Nakamura
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Journal Title
Cancers
Volume: 12(9)
Pages: 2345
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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