2020 Fiscal Year Research-status Report
LCM法による子宮腺筋症凍結検体の高感度遺伝子変異検出法の確立
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19K07708
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Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
井上 聡 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 特任研究員 (30801930)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 子宮内膜 / LCM / 子宮腺筋症 / 子宮内膜症 / 分娩 / 妊娠 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に確立したLCM法による微小領域からのゲノムDNA回収法を改良し、FFPE検体から、より簡便かつ効率よくゲノムDNAを回収する方法の開発に成功した。この新手法を活用し、正所性子宮内膜の腺管を正確に切り出することで、次世代シークエンサーを用いて、信頼性が高く、効率的な正常子宮内膜におけるゲノム異常の検出することに成功した。 臨床情報との相関性を解析したところ、興味深い点として、自然分娩歴のある患者由来の子宮内膜検体において、KRAS変異が有意に検出された。帝王切開歴とKRAS変異頻度との間には相関性が認められなかったため、自然分娩過程において、子宮組織に急激かつ激しい物理的ストレスがかかり、その結果、子宮内膜におけるゲノム異常が誘発されている可能性が示唆された。経産婦は、子宮腺筋症のリスク因子として知られていることとから、自然分娩過程において、子宮内膜上にKRAS遺伝子変異が誘発され、子宮腺筋症の起源クローンとして増殖し、最終的に子宮筋層において、異所性増殖し、子宮腺筋症を発症するという分子レベルでの発症仮説が示唆された。上記の研究成果をCell Death and Disease誌に発表した(Inoue, S., Yoshida, E., Fukui, Y., Ueno, T., Kawazu, M., Takeyama, R., Ikemura, M., Osuga, Y., Terao, Y., Hirota, Y., Mano, H. KRAS mutations in uterine endometrium are associated with gravidity and parity. Cell Death Dis 2020 11: 347)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度のNature Commun誌への発表に引き続き、今年度も、Cell Death Disease誌への発表(Inoue, S., Yoshida, E., Fukui, Y., Ueno, T., Kawazu, M., Takeyama, R., Ikemura, M., Osuga, Y., Terao, Y., Hirota, Y., Mano, H. KRAS mutations in uterine endometrium are associated with gravidity and parity. Cell Death Dis 2020 11: 347)に至った。今年度、開発した新しい独自の微小領域からの効率的なゲノムDNA抽出法を基盤としたゲノム解析法を活用し、これまで困難とされてきた正常組織におけるゲノム異常の実態解明に向けた研究結果が蓄積しつつあり、次の論文発表に向けて投稿準備中段階まで進捗しているため。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度、開発した微小領域からのゲノムDNA調整法を活用し、来年度は、子宮内膜をはじめ、様々な正常組織におけるゲノム異常の実態解明に挑む。特に、不妊症や不育症、婦人科良性疾患の検体に対するゲノム解析において、興味深い結果が得られつつあり、来年度中の論文発表を目指す予定である。課題として、古いFFPE検体については、いわゆるFFPE artefactの除去が不完全であり、偽陽性をフィルターアウトするような解析パイプラインの開発も計画している。さらにゲノム異常のみならじ、微小領域からのメチル化解析にも挑むことで、正常組織における網羅的ゲノム解析技術基盤の確立を目指す。
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Causes of Carryover |
本年度はコロナ渦により、実験関連試薬の注文が滞った。特にPCR関連試薬は在庫切れなどにより、注文自体が不可能であった。しかしながら、研究室の共有物品などの代替試薬、機器を活用することにより、研究進捗への影響は認められなかった。来年度は、年度前半から注文をすることで、計画的に予算を執行し、これまで蓄積した研究技術を開花させるべく、論文発表に向けて、効率よく研究費の執行に努める予定である。
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Research Products
(2 results)
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[Journal Article] KRAS mutations in uterine endometrium are associated with gravidity and parity.2020
Author(s)
Inoue, S., Yoshida, E., Fukui, Y., Ueno, T., Kawazu, M., Takeyama, R., Ikemura, M., Osuga, Y., Terao, Y., Hirota, Y., Mano, H.
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Journal Title
Cell Death Disease
Volume: 11
Pages: 347
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] High-throughput functional evaluation of BRCA2 variants of unknown significance.2020
Author(s)
Ikegami, M., Kohsaka, S., Ueno, T., Momozawa, Y., Inoue, S., Tamura, K., Shimomura, A., Hosoya, N., Kobayashi, H., Tanaka, S., Mano, H.
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Journal Title
Nature Communications
Volume: 11
Pages: 2573
DOI
Peer Reviewed / Open Access