2019 Fiscal Year Research-status Report
Analyses on the role of Eomesodermin in CD8+ T cell exhaustion
Project/Area Number |
19K07715
|
Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
江島 耕二 北里大学, 医学部, 准教授 (30327324)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | T細胞疲弊化 / Eomesodermin / トランスジェニックマウス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の最終目的は,慢性感染や抗腫瘍免疫応答でしばしば問題となるT細胞疲弊化の機序を解明し,得られた知見をT細胞疲弊化解除に応用して新規治療法開発に資することである。本研究課題では特に疲弊化T細胞で高発現する転写因子Eomesodermin(Eomes)に注目し,EomesがT細胞疲弊化に関与しているかどうかの解明を目指す。方法としては,Eomesを全てのT細胞に強制的に発現させるようなトランスジェニックマウスを(Eomes-Tg)作成して,Eomesを高発現したT細胞の性状や機能を解析している。先行研究においてEomes-TgのT細胞では疲弊化マーカーPD-1やTIM-3の発現上昇やCD127(IL-7R)の発現低下が見られ,Eomesがこれらのマーカーの転写調節に関与していることが示唆された。本年度,さらに詳細な解析を行った結果,以下の実験結果を得ることができた。 ① Eomes-Tgでは末梢の成熟T細胞の数が減少していたが,胸腺細胞数についてはほぼ正常であった。今回胸腺細胞におけるtransgeneの発現を確認したところCD4/CD8両陰性の未熟な段階からEomesの発現が見られた。しかし疲弊化マーカーの発現上昇は,胸腺中の成熟T細胞ではあまり見られず,Eomesによる疲弊化マーカー発現誘導には成熟後一定時間を要することが示唆された。 ② Eomes-Tgにおける末梢での成熟T細胞数減少の原因について検討したところ,Eomes-TgのT細胞では野生型の細胞に比べてAnnexin V陽性細胞の割合が有意に高く,細胞死が亢進していた。 ③ Eomes-Tgの末梢の成熟T細胞では,PD-1やTIM-3だけでなく,CD39やCD160など他の疲弊化マーカーの発現の上昇も見られた。活性化マーカーにおいてはCD44やLy-6C,KLRG-1などの発現上昇も見られた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度はEomes-TgマウスのT細胞の表現型の解析をメインに行うことを計画していたが,マウスの交配も特に問題なく進み,必要な数のマウスを用いて解析することができた。その結果,Eomes-TgのT細胞では疲弊化T細胞と共通の発現マーカーの発現量が上昇していること,また細胞死が亢進しているなど,疲弊化T細胞の特徴の多くが現れていることが明らかとなった。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在までの解析により,Eomes-TgのT細胞では野生型マウスの細胞に比べて,疲弊化マーカー・活性化マーカーの発現が上昇していることが明らかとなった。しかしながらこれらのマーカーの発現はいずれも抗原刺激によって誘導されるものであり,Eomesが単独で直接これらの分子の発現を誘導しているのか,それともEomesは抗原刺激を受けた細胞の中でこれらのマーカーの発現上昇を促進しているのかは現在のところ不明である。この2つの可能性を区別するために次年度はT細胞抗原受容体のトランスジェニックマウス(TCR-Tg)を用いて,解析を行う予定である。使用するTgのTCRは環境抗原に反応せず,このTCRのみを発現した細胞は通常の飼育環境下では抗原刺激を受けない。今年度このTCR-TgとEomes-Tgを交配し,両方のTgをもつマウスが得られた。そこで次年度にはこの実験系を用いて,抗原刺激を受けないT細胞におけるEomes強制発現の効果を解析する予定である。 また,Eomes-TgのT細胞に発現する分子について,とくに接着分子の発現についても解析する予定である。Eomes-Tgでは血液中や末梢のリンパ組織中のT細胞の数は野生型マウスに比べて減少していたが,骨髄中のT細胞の割合は減少していなかった。EomesはメモリーT細胞内でも高発現していること,またメモリーT細胞は骨髄へ集積する傾向があることが示されているが,このことがEomes-Tgにおいて,骨髄中のT細胞の割合が減少していないことの一因となっている可能性が考えられる。すなわち,リンパ組織でのT細胞の減少の理由として,T細胞の体内分布の変化が考えられた。そこで次年度にはメモリー細胞の体内移動,(非リンパ組織を含めた)局在に関与する接着分子の発現についても解析する予定である。
|
Causes of Carryover |
本年度,研究はほぼ計画通りに遂行でき,130万円の使用予定金額に対して,約1.2万円(約1%)の残額となった。この残額は次年度消耗品費として使用する予定である。
|