2019 Fiscal Year Research-status Report
Development of gadolinium neutron capture therapy agent for next-generation radiation therapy applied for bone cancer
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19K07717
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
松川 岳久 順天堂大学, 医学部, 助教 (60453586)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 中性子補足療法 / LA-ICP-MS / ガドリニウム / 骨腫瘍 / 動物モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
骨に発生する癌には、一般的な放射線療法は効果が低いと言われていることから、現在の化学療法と手術に加え次世代放射線療法の適応が期待されている。中性子捕捉療法は、次世代の癌放射線療法として期待されている。ガドリニウム157(157Gd)などの中性子捕捉元素を腫瘍細胞に集積させ体外から中性子を照射することで、腫瘍細胞内で選択的に放射線を発生させ治療する。これまで157Gdは腫瘍集積性の定量的評価が困難であったため薬剤開発が進んでいなかった。申請者らは157Gdの組織内分布を定量的に評価する手法を開発してきたことから、これを応用し、新たな中性子捕捉療法製剤の候補物質である157Gdのethylenediamine tetra(methylene phosphonic acid)キレート:157Gd-EDTMPの骨腫瘍集積性を組織レベルで評価し、中性子照射による癌治療効果を検証していく。本研究は、新規ガドリニウム中性子捕捉療法製剤として157Gd-EDTMP製剤に着目し、地球惑星科学分野の分析手法を生体試料に応用することで腫瘍集積性を定量的に評価することである。また、本研究の学術的創造性は、新しい骨腫瘍治療法の開発につながるとともに、ガドリニウムという元素の性質を利用することで、診断/治療薬の同一製剤化という新分野への展開も期待できることである。当年度は、作成したGd-EDTMPをマウスに投与し、実際に中性子線を照射することで、腫瘍への効果を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概ね順調に進展している。 骨腫瘍に対する中性子捕捉療法への適応が期待できるガドリニウム(Gd)のEDTMP: ethylenediamine tetra(methylene phosphonic acid)キレート(Gd-EDTMP)について、レーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析法(LA-ICP-MS)による骨内Gdを定量イメージングするとともに中性子照射後の効果について検討したので報告する。【方法】イソフルランで麻酔したC3H / HeNJcl雌マウス(7週齢)にLM8細胞(RBRC-RCB1450)を右後脛骨に移植した(マウスあたり2×106細胞)。移植後4日目に、マウスを無作為に4群(n = 4)に分けた。2群のマウスにGd-EDTMPを10.0 mg-Gd/kgで腹腔内投与し、他の2群のマウスには同じ容量の生理食塩水を注射した。注射の24時間後、Gd-EDTMP投与群と生理食塩液群の各1群に対して、8.0×1012cm-2の熱中性子を120分間照射した。熱中性子照射の7日後、脛骨サンプルを採取し、レーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析(LA-ICP-MS)によりGd分布を明らかにした。また、腫瘍の状態を、脛骨および大腿骨のH.E.染色切片の顕微鏡写真によって評価した。Gd-EDTMP投与24時間後の脛骨のGd濃度は骨端線付近において周囲の筋肉組織に比べて300倍から700倍の濃度を示し、一部の領域では筋肉より3000倍高濃度のGdがみられた。H.E.染色による顕微鏡写真では熱中性子照射自体が腫瘍細胞に影響している可能性が示唆されたため、熱中性子照射条件等のさらなる検討が必要と考えた。以上から、Gd-EDTMP製剤は骨転移腫瘍に適応を絞り、熱中性子照射量を検討することで中性子捕捉療法製剤となる可能性が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
今回の検討では熱中性子照射により悪性黒色腫によるメラニンの分布に有意な差は認められなかったが、作成した動物モデルの数が少なったことや、色素を指標としたため、悪性黒色腫細胞自体の比較はできなかったことによるものと考える。今後、より厳密に中性子捕捉の治療効果を追える実験動物モデル系、特に骨転移の疼痛に着目したモデルについて検討を進めていくことが必要であると考えられた。
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Causes of Carryover |
当該年度においては京都大学複合原子力研究所にて関係研究テーマが採択されたため、研究出張にともなう宿泊費が上記研究所の予算から計上できた。次年度については、動物実験上、問題のない範囲で、テスト動物の数を増やすことで研究を加速させる。なお、実験結果の判定を明確化するため、腫瘍に関連する遺伝子改変した細胞を導入することも予定している。
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