2021 Fiscal Year Research-status Report
EGFR肺がん特異的翻訳産物の機能解析と新規治療法の開発
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19K07724
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Research Institution | National Institute of Health Sciences |
Principal Investigator |
築茂 由則 国立医薬品食品衛生研究所, 遺伝子医薬部, 主任研究官 (40469630)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | EGFR / 肺がん / バイオマーカー / 分子標的 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は、肺がんのドライバー変異として知られるEGFR変異と相関して発現が上昇する複数のタンパクを同定した。そのうちの1つ、タンパクXが、EGFR変異陽性細胞から分泌されるエクソソーム表面に豊富に存在する糖タンパクであることを突き止めた。タンパクXのノックダウン、ノックアウト実験により、EGFR変異陽性細胞特異的に増殖抑制がみとめられた。さらに、候補タンパクXに対するブロッキング抗体にはEGFR変異陽性細胞に対して増殖阻害効果があることがわかった。 今年度は、タンパクXがEGFR肺がんを検出するためのバイオマーカーとして利用可能かどうか検討を進めた。具体的には、TCGAデータベースに登録されている正常組織(60検体)と肺がん組織(500検体)のトランスクリプトームデータを用いて、タンパクXの発現量(mRNA)を指標とし、既存の腫瘍マーカーCEAとの診断能を比較した。ROC解析の結果、CEAは感度82%、特異度88%、タンパクXは感度77%、特異度86%となり同レベルの診断能を有していた。次に正常組織とEGFR変異陽性肺がん組織とで比較したところ、CEAは感度72%、特異度88%、タンパクXは感度100%、特異度95%であった。このため、タンパクXはEGFR変異陽性肺がんの有効なバイオマーカーとなる可能性が示唆された。また、タンパクXがEGFR肺がんの早期発見に利用できる可能性を期待し、岡山大学バイオバンクからステージIのEGFR変異陽性、陰性肺がん患者由来の血漿検体(陽性6検体、陰性6検体の合計12検体)を取得し、タンパクXの血中量について比較検討した。しかしながら、本検討では血中存在量に関しては陽性、陰性検体間で明らかな差は認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
EGFR変異陽性肺がんに着目することでタンパクXが優れたバイオマーカーになる可能性が示された。 また、培養細胞系における、分泌タンパクXに対する抗体添加実験やタンパクXのノックダウン実験では、EGFR変異陽性細胞特異的な増殖抑制効果も認められており、バイオマーカー以外にも治療標的としても有望と考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
血漿検体からの検出に関しては、検体数の増加やタンパクXの糖鎖修飾を指標とすることで、診断マーカーとして利用できる可能性がある。 EGFR変異肺がん細胞における分泌タンパクXの機能、シグナリングパスウェイへの影響の詳細について解析を進め、治療標的化を進める上での基盤情報を取得する。
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Causes of Carryover |
2020年初頭から国内で蔓延している新型コロナウイルスへの行政対応業務が発生したため、本研究に取り組むための時間が制限され支出額が減った。繰り越した費用については、今年度の消耗品や成果発表等で使用する予定である。
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Research Products
(3 results)