2020 Fiscal Year Research-status Report
ユビキチンプロテアソーム経路を標的とした進行性腎細胞癌に対する新規治療戦略の構築
Project/Area Number |
19K07736
|
Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
吉野 裕史 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 助教 (90642611)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
榎田 英樹 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 准教授 (80347103)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 腎癌 / ジスルフィラム / ユビキチンプロテアソーム |
Outline of Annual Research Achievements |
ジスルフィラムはアルコール依存症に対する治療薬であるが、最近、NPL4を介したジスルフィラムの抗腫瘍効果が報告された。NPL4はユビキチンプロテアソーム系に関与するタンパク質でジスルフィラムにより阻害されると、細胞は不良タンパク質を分解できず細胞死に至る。しかし、腎細胞癌においてジスルフィラムやNPL4に関連する報告はほとんどない。そこで、腎細胞癌におけるジスルフィラムによるNPL4を標的とした治療の可能性の探索と、それらに関わる癌シグナル経路を解明し、新たな治療戦略の基礎データを提示することが本研究の目的である。 今年度の研究成果として、昨年度までに得られていた結果を論文化することができたことである。内容としては、腎癌コホートにおいてNPL4高発現群(n=266)は低発現群(n=266)と比べて全生存期間が有意に低下していたことを示し、腎癌細胞株においてNPL4をsi-RNAやジスルフィラムで阻害すると、対照細胞と比べアポトーシス誘導を介した増殖能の有意な低下を認めた。また、増殖アッセイ、Xenograftアッセイにおいて、ジスルフィラム単独の腫瘍抑制効果とスニチニブとの併用効果を確認した。更に、腫瘍片を用いたプロテオミクス解析を行い、PSAT1やAKR1B1といった遺伝子の発現がジスルフィラム投与サンプルにおいて低下し、スニチニブとの併用サンプルにおいては更に低下していることを確認し、ジスルフィラムの抗腫瘍効果におけるこれらの遺伝子の関与が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究に関して、上述の通り論文が採択されたためである。
|
Strategy for Future Research Activity |
Xenograftアッセイにおいて腫瘍片のプロテオミクス解析を実施したが、ジスルフィラム単独やスニチニブ併用群において解糖系やセリン合成経路に関与するPSAT1やAKR1B1といった遺伝子が抑制されていた。今後は、プロテオミクス解析結果から抽出された標的遺伝子に関して、ジスルフィラムとの関係を検証する予定である。また、ジスルフィラムが制御する既存の分子標的薬の制御とは異なる癌浸潤、転移抑制機構の探索を行う予定である。
|
Causes of Carryover |
本年度は新型コロナの影響で参加を予定していた学会が中止となり、旅費が使用できなかった。また、同様の理由で実験が予定通りに進まず購入を予定していた物品の納入ができなかった。次年度は、学会にも参加し、プロテオミクス解析結果から抽出されたPSAT1やAKR1B1といった遺伝子に関して、ジスルフィラムとの関係を検証する予定である。また、CRISPRライブラリーを用いて、ジスルフィラムが制御する既存の分子標的薬の制御とは異なる癌浸潤、転移抑制機構の探索を行う予定であるため、次年度も旅費並びに実験費が必要である。
|
Research Products
(4 results)