2020 Fiscal Year Research-status Report
ヒト正常組織での変異シグネチャー解析実現による個人別発がん要因特定
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19K07745
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Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
山下 聡 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, ユニット長 (80321876)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 突然変異 |
Outline of Annual Research Achievements |
発がん要因と関連した変異の特徴(シグネチャー)は、要因の同定やがんの予防・治療の研究に重要である。本研究では、非がん組織の突然変異を測定し、各個人の組織における変異シグネチャーを解明する。超低頻度の点突然変異を解析する場合、両ストランドに同一の変異が存在する真の変異のみを検出する必要がある。そのために、申請者が以前に開発した超低頻度の点突然変異頻度解析法(特願2015-199342)の改良として、(1)二鎖に同一の分子バーコードが付与されるDuplex法の改良、(2)両ストランドを分離させないで増幅する新規の方法の開発、を進めた。昨年度は(1)について、ゲノムDNAを制限酵素で処理することにより測定するゲノム領域を限定することで効率を向上させる改良を導入、(2)について、両ストランドを同時にシークエンシングするためのアダブター、ポリメラーゼの検討を開始した。今年度は、(1)制限酵素を濃縮率などからBamHIに決定した。2種類の細胞株を混合し、既知のSNPを変異と見なした低頻度突然変異モデルサンプルを作製し、想定した変異頻度が実際に得られるかどうか解析した結果、想定した変異頻度とよく相関した変異頻度を得ることができることが確認できた。このモデル実験で適切な測定条件(初期テンプレート量など)、変異解析条件(一つのUMI中の最低リード数など)を決定することができ、実際にサンプルが解析可能な状況となった。(2)については、耐熱性鎖置換型ポリメラーゼを用いても理想とする増幅産物が得られなかったので断念した。今後は(1)の方法で組織サンプルの解析を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究実施計画の大要である、超低頻度突然変異頻度解析方法の高精度化のために、二鎖に同一の分子バーコードが付与されるDuplex法の改良として、ヒトゲノムDNAを制限酵素で断片化し、ライブラリ作製に適する長さのフラグメント領域のみを取り出すことで濃縮して解析した。制限酵素を計算上の濃縮率が200倍程度になるBamHIに決定した。この濃縮により二鎖が同時に解析できる率が上がるので、リードをマッピングした時のdepthが大きくなることを確認した。HPDE4, TK6の2種類の細胞株を混合し、既知のSNPを変異と見なした低頻度突然変異モデルサンプルを作製し、想定した変異頻度が実際に解析して得られるかどうか検証した。適切な測定条件(初期テンプレート量=1Mなど)、変異解析条件(一つのUMI中の最低リード数=3など)を決定することができ、実際にサンプルが解析可能な状況となった。
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Strategy for Future Research Activity |
申請者が以前に開発した超低頻度の突然変異を測定する方法に分子バーコードを付与することで更に高精度化する方法である、二鎖に同一の分子バーコードが付与されるDuplex法に制限酵素を用いた高度な濃縮で効率を向上させた方法が完成した。本方法を用いてヒト食道がん患者の各個人の非がん組織に蓄積した突然変異を測定し、変異シグネチャーを解明する。喫煙・飲酒などの発がん要因曝露量の情報がある食道がん患者の非がん部合計50例のDNA(以前の研究の残余が使用可能)を用いる。シークエンシングは1サンプルあたり12Gbaseで外注により行う予定である。
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Causes of Carryover |
シークエンシングを行う実験に関連する費用が想定より今年度(方法の検証実験)は若干少なかった。次年度(主にサンプルの解析実験)に使用する予定である。
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