2020 Fiscal Year Research-status Report
in vitro分化誘導した長期生存形質細胞を用いた革新的薬剤投与法の開発
Project/Area Number |
19K07747
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Research Institution | Aichi Cancer Center Research Institute |
Principal Investigator |
羽根田 正隆 愛知県がんセンター(研究所), 腫瘍免疫制御TR分野, 研究員 (50436995)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 形質細胞 / ナイーブB細胞 / ゲノム編集 / IgM / 抗体医薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究のゴールは、末梢血中のナイーブB細胞をゲノム編集により元々の抗体産生機能を欠失させると同時に抗体医薬をノックインし長期生存形質細胞へと分化誘導することである。長期生存形質細胞を利用できれば抗体医薬を産生し続けることで繰り返し薬剤を投与する必要がなくなると考えられる。 本年度は、イムノグロブリン重鎖のうちIgHγ1,γ2,γ3,γ4定常領域に対するgRNAの選定を行った。CHOPCHOP、IDT社のCRISPR-Cas9 guide RNA design checker及びHORIZON社のCRISPR Design Toolsを利用し、設計を行ったが難航した。またIgHγ1,γ2,γ3,γ4で可能性のある配列でgRNAを作成し、in vitroでのgRNAの実際のDNA切断効果について検討を行ったが、適切なgRNAは選定できなかった。この事から当初予定していたIgG産生形質細胞を利用することを断念した。また効率的に特異的なclass switchを誘導することは困難であることからIgHα1,α2,εについては検討は行わず、class switchした形質細胞を利用しない方法について文献検索等を行った。 マウスの実験系ではあるがIgM産生長期生存形質細胞も存在しうるとの報告があり、IgGの代わりにIgMの定常領域(IgHμ)に対するDNA切断効果が高くoff-target効果の低いgRNAの設計を行った。本年度は、このgRNAを用いて実際のDNA切断効果についてin vitroで検討を行う予定である。またB細胞に対するIgM定常領域を効率的に切断できるgRNAについてin vivoでも検討を行い、抗体産生を欠失させた形質細胞培養系の確立及び長期培養可能かについて判定を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
CHOPCHOP、IDT社のCRISPR-Cas9 guide RNA design checker及びHORIZON社のCRISPR Design ToolsでIgHγ1,γ2,γ3,γ4定常領域に対するgRNAの選定を行ったが、難航した。原因としてはイムノグロブリン重鎖遺伝子はお互いに相同性が高く、特異性が望まれるdesign checkerでは検出が難しい事、切断効率が高くoff-target効果の低い適切な領域が極めて少ない事が挙げられた。またIgHγ1,γ2,γ3,γ4で可能性のあるgRNAを作成し、in vitroでの実際のDNA切断効果について検討を行ったが、適切なgRNAは選定できなかった。この結果を受けて、当初予定していたIgG産生形質細胞を利用することを断念した。また効率的に特異的なclass switchを誘導することは困難であることからIgHα1,α2,εについては検討は行わず、class switchした形質細胞を利用しない方法について文献検索等を行った。 マウスの実験系ではあるがIgM産生長期生存形質細胞も存在しうると報告があることから(Nat Commun.2016.Aug16;7:12687)、IgGの代わりにIgM(IgHμ)に対するDNA切断効率が高くoff-target効果の低いgRNAの設計を試みた。複数候補が検出されたため、実際のDNA切断効果についてin vitro、in vivoで検討を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
IgHγ1,γ2,γ3,γ4に対するgRNAの選定は断念したが、代わりにIgMの定常領域(IgHμ)に対するgRNAの設計を行いDNA切断効率が高くoff-target効果の低い候補が複数検出された。実際のDNA切断効果についてin vitroで検討を行う予定である。in vitroで効率的なgRNAが選出できれば、in vivoで活性化B細胞への変異導入効率を検討し、抗体産生を効率よく欠失させるgRNA配列を決定する。 培養系においては、IgM抗体産生形質細胞をより効果的に分化誘導する系を確立する。CRISPR-Cas9を用いてPAX5を欠失させ形質細胞への分化誘導を促進し、またAICDAを欠失させIgMからIgG,A,Eへのclass switchを抑制する。次にAPRIL及びBAFFを添加することでIgM産生形質細胞が実際に長期間培養可能か判定を行う。 最終的には二つの系を統合し、抗体産生能を欠失したIgM産生形質細胞が実際に長期間培養可能か判定を行う。さらに抗体薬を同時に遺伝子移入した場合の長期生存や抗体産生能の維持についても検討を行う予定である。
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Causes of Carryover |
当初の計画ではイムノグロブリンを欠失させた形質細胞の培養実験を行う予定であったが、IgHγ1,γ2,γ3,γ4定常領域に対するgRNAが選定できず、培養関係の試薬の購入が次年度になってしまったため、当初予定した使用額より少額となった。 R3年度は、IgMの定常領域(IgHμ)に対するgRNAのDNA切断効果についてin vitroで検討を行う予定である。in vitroで効率的なgRNAが選出できれば、in vivoで活性化B細胞への変異導入効率を検討し、抗体産生を効率よく欠失させるgRNA配列を決定する。 培養系においては、IgM抗体産生形質細胞をより効果的に分化誘導する系を確立する。CRISPR-Cas9を用いてPAX5を発欠失させ形質細胞への分化誘導を促進し、またAICDAを欠失させIgMからIgG,A,Eへのclass switchを抑制する。次にAPRIL及びBAFFを添加することでIgM産生形質細胞が実際に長期間培養可能か判定を行う。 最終的には二つの系を統合し、抗体産生能を欠失したIgM産生形質細胞が実際に長期間培養可能か判定を行う。さらに抗体薬を同時に遺伝子移入した場合の長期生存や抗体産生能の維持について検討を行う予定である。
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