2019 Fiscal Year Research-status Report
血清オミックス解析を中心とした多発性骨髄腫の治療薬レナリドミドの感受性因子の探索
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19K07756
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
李 政樹 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 講師 (00567539)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前川 京子 同志社女子大学, 薬学部, 教授 (70270626)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 多発性骨髄腫 / レナリドミド / 末梢血 / 感受性 / 耐性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、レナリドミド治療前に患者さんから採取した検体(骨髄液及び末梢血)から治療効果を予測しうるバイオマーカー候補を探索することを目的とする。骨髄液から骨髄腫細胞・ストローマ細胞の遺伝子変異・発現量解析、末梢血血清からはエキソソーム・遊離核酸のmiRNA発現量解析及び血清全体の脂質メタボローム解析を行い、治療効果に関わる遺伝子・代謝物を同定する。今年度はレナリドミド+デキサメサゾン(Ld)療法を導入された再発難治性多発性骨髄腫患者83名の骨髄種細胞よりRNAを抽出し、レナリドミドの感受性に関わる可能性のある4つの遺伝子、CRBN、IKZF1、IKZF3、KPNA2のmRNA定量を行い、Ld療法による治療効果との関連の解析を行った。その結果、CRBN関連遺伝子のmRNA発現レベルは最良効果、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)と有意な関連は認められなかった。しかし、これらの遺伝子の発現量をCRBN比で評価したところ、IKZF1 / CRBN比はLd療法に対するgood responder(CR + VGPR + PR、n = 32)よりもpoor responder(SD + PD、n = 15)で有意に低かった(P = 0.01)。 逆にKPNA2 / CRBN比が高い患者は、低い患者と比較してPFSおよびOSが有意に短かった(P = 0.01)。 またIKZF1とKPNA2には負の相関が認められた。以上の結果から、骨髄腫細胞における遺伝子発現として、IKZF1 / CRBN比はLd療法における治療効果に関連したバイオマーカーとなりうる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年度は、レナリドミド治療の感受性に関わる因子を患者さんの腫瘍細胞の遺伝子発現解析を中心に行ったが、その他の解析(末梢血のcell free DNA解析、マイクロRNA,解析、メタボローム解析など)まで、まだ着手できていない。レナリドミド感受性や耐性に関わる遺伝子の発現および変異を、骨髄腫細胞の遺伝子解析(RNAシークエンス解析など)および末梢血の遊離核酸解析の結果と照合し、レナリドミド耐性時に治療標的となりうる遺伝子変異の同定などを、2020年度には行う予定である。その途上であるため、やや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果を継続発展させ、引き続きレナリドミドの感受性に係る因子を患者さんの末梢血血清中の物質の網羅的な探索より同定することを目標とする。今後、末梢血cell free DNAの遺伝子変異の解析を多数検体で行い、また、初発から治療抵抗性に至るまでの経時的な解析で、末梢血中に現れる遺伝子変異を同定し、治療の感受性や夜ごとの関連を解析していく予定である。また、血清中のマイクロRNAの解析においては、各マイクロRNAの発現量と、治療による効果(最良奏効効果や無増悪生存期間・生存期間など)を照らし合わせることで、バイオマーカーの候補となりうるものを同定する。 さらに、遊離核酸のみならず、血清中の脂質代謝産物の解析も行う。具体的には、血清の脂質代謝物を酸化脂肪酸群とリン脂質群に分けて、それぞれ質量分析計を用いてその発現量の測定および構造解析を行い、レナリドミド治療効果と関連性のある脂質代謝産物を同定することを目標とする。まずは疾患と特異的な代謝産物のデータ確立のために、健常人、骨髄腫患者(初発・再発難治)間で、産物量の差異を解析する予定である。
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Causes of Carryover |
理由: 研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため当初の見込み額と執行額は異なったが、研究計画に変更はなく、前年度の研究費も含め、当初予定通りの計画を進めていく。 使用計画:次世代シークエンスに必要な試薬群(ライブラリー作成試薬、シークエンス試薬など)を購入する。さらには、抽出された核酸のなかでも、cell free DNAおよびマイクロRNAの解析として、必要な試薬群も購入予定である。
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