2022 Fiscal Year Annual Research Report
マイコプラズマ由来アルギニン代謝制御蛋白質を標的とした新規がん免疫療法の開発
Project/Area Number |
19K07764
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
西中川 拓也 福岡大学, 薬学部, 助教 (30600035)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 微生物感染腫瘍 / 抗体医薬 / 新規がん診断法 |
Outline of Annual Research Achievements |
がんの発生や進展の要因の一つに微生物感染が挙げられる。近年、がん細胞へのマイコプラズマ感染が病態の発症や進行に関わっていることが報告されており、その分子基盤の解明が急務である。 本研究の目的は、がん細胞に感染したマイコプラズマが産生・分泌する免疫抑制性分子Arginine Deiminase (ADI) に対して、特異性の高いマウスモノクローナル抗体を樹立することで、血清学的臨床診断やがんの予後診断、さらには中和抗体としての可能性を探索するとともに、ADIによる細胞障害機構を明らかにし、がんの新規治療法開発へ貢献することである。 本研究課題において、ADIに対するマウスモノクローナル抗体を複数クローン樹立することに成功した。樹立抗体は、細胞染色やWestern Blotting法、サンドイッチELISA法など様々なイムノアッセイに応用可能であることが確認できた。ADI検出系の構築は、ADIの細胞培養系やガンモデルマウスを用いた解析だけでなく、患者血清やがん組織を用いた臨床研究にも応用できる可能性がある。 また、これまでに、マイコプラズマは120種以上の亜型が知られており、それら亜型間のアミノ酸配列変化や翻訳後修飾の差異により、生物活性が異なることが報告されている。本年度は、マイコプラズcDNAより、ADIをコードする遺伝子を単離し、その遺伝子配列を同定し、さらに、マイコプラズマコドンからヒトコドンへの置換、ならびにコドンの最適化を行った。ADIの遺伝子配列の同定ならびに一次アミノ酸構造の決定は、リコンビナントタンパクの作製や生物学的特性の解析、さらには細胞障害活性部位の解明において重要な知見となる。 今後は、リコンビナントADIを用いた生物学的機能解析や中和抗体の樹立、ADIの細胞障害活性を阻害する低分子化合物の探索を行い、マイコプラズマ感染がんに対する新規治療薬開発を目指す。
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