2019 Fiscal Year Research-status Report
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19K07767
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Research Institution | Chiba Cancer Center (Research Institute) |
Principal Investigator |
高取 敦志 千葉県がんセンター(研究所), がん治療開発グループ, 室長 (40455390)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡部 隆義 千葉県がんセンター(研究所), がん研究開発グループ, 研究員 (60526060)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 遺伝子増幅 / ピロール・イミダゾール・ポリアミド化合物 / アルキル化剤 / ケミカルバイオロジー / 標的治療 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの研究から、遺伝子配列特異的にDNAをアルキル化できる化合物ピロール・イミダゾール・ポリアミド-seco-CBI (PIP-seco-CBI)によりMYCN遺伝子増幅ゲノム領域で特異的に構造変化が起きていることを示す現象が観察され、その結果はCRISPR/Cas9による増幅遺伝子特異的DNA傷害によって再現された。これらの結果から、PIP-seco-CBIやCRISPR/Cas9による遺伝子増幅領域におけるDNA傷害がもたらすゲノム構造変化のメカニズムを明らかにし、増幅がん遺伝子を標的とした新しいがん治療法の開発につなげることを本研究課題の提案に至った。本年度は、増幅MET遺伝子に対するCRISPR/Cas9により誘導する遺伝子増幅領域におけるDNA傷害の影響について検討した。MET遺伝子増幅陽性の胃がん由来MKN45細胞において、MET遺伝子内の異なる2か所に設計したCRISPR/Cas9を導入したところ、いずれのcrRNAにおいても細胞死の誘導が観察された。そこでMET遺伝子に標的配列を持つPIP-seco-CBIをMKN45細胞に処理したところ、細胞死誘導およびMET遺伝子の発現抑制が確認され、MET遺伝子に対するFISH法ではFISHプローブシグナルの減弱が観察された。これらの結果から、MET遺伝子増幅ゲノム領域特異的にDNA傷害を誘導することにより、MYCN遺伝子の場合と同様のゲノム構造変化が惹起され、遺伝子発現の抑制と細胞死の誘導につながることが示唆された。一方、標的化が可能な増幅遺伝子の同定を目的に、ALK遺伝子に標的配列を持つPIP-seco-CBIを合成し、ALK遺伝子増幅陽性細胞においてその効果を検討したところ、ALK遺伝子に対するFISHシグナルの減弱が認められたことから、増幅ALK遺伝子についても標的化できる可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
増幅遺伝子特異的DNA傷害による標的メカニズムの解明については、人工染色体に増幅遺伝子を導入する技術の調査を行ったところ、効率よく外来遺伝子を導入できるHACベクターにおいても搭載できる同一遺伝子コピー数は3~5コピーほどであり、さらに培養中にコピー数が減少する可能性があることが指摘された。そこで、本研究ではまず増幅遺伝子を持つことが知られている細胞株を中心に研究を進めていき、遺伝子増幅モデルの構築のための調査は引き続き行っていくこととした。一方、増幅遺伝子領域におけるDNA傷害により起こるゲノム構造の変化を明らかにするため、FISH法およびタ免疫染色法を組み合わせた二重染色法によりDNA傷害部位に集積するタンパク質を可視化する予備検討を行っている。標的化が可能な増幅遺伝子の同定に関しては、上述の通り増幅MET遺伝子を標的とすることが可能である結果が得られている。さらに、ALK遺伝子増幅に対するPIP-seco-CBIの設計・合成および増幅陽性細胞における効果についてALK阻害剤との比較検討を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
今回、MYCN遺伝子と同様にFISHシグナルの減弱がMET遺伝子においても認められたことから、両者においてDNA傷害により集積するタンパク質の有無について、二重染色法やChIPアッセイ法により検討する。また、増幅ALK遺伝子がPIP-seco-CBIによる標的化が可能であることを示す結果が得られているが、今後は特に特異的治療薬の開発が進んでいない標的遺伝子について、標的化の可能性を検討していく。一方、ALK遺伝子やその他の候補遺伝子に対して設計・合成したPIP-seco-CBIの配列特異的結合能や物性について、表面プラズモン共鳴(SPR)法やDNA熱安定性解析によって検討する。その中で、増幅遺伝子陽性細胞における細胞増殖抑制効果および増幅遺伝子の傷害効果が認められた化合物については、順次担がんマウスモデルによる抗腫瘍効果の評価を行う。
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Causes of Carryover |
増幅ALK遺伝子を標的とするPIP-seco-CBI化合物の標的配列に対する特異的結合能を明らかにするSPR法による評価を2021年度に行う計画とし、その試験に必要な経費を次年度に使用する必要が生じたため。SPR法に用いるBiacoreのセンサーチップまたはゲルシフトアッセイに用いる試薬、修飾オリゴDNAの費用に使用し、PIP-seco-CBI化合物の特異的結合能について検討を行う。
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