2019 Fiscal Year Research-status Report
腫瘍血管内皮細胞の抗原提示能を活かした次世代がん免疫療法の基盤研究
Project/Area Number |
19K07775
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
宇高 恵子 高知大学, 教育研究部医療学系基礎医学部門, 教授 (40263066)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | HLA class II / peptide / Immunotherapy |
Outline of Annual Research Achievements |
腫瘍血管内皮細胞(EC)の抗原提示能を活かし、腫瘍を含む末梢組織に抗原特異的T細胞を浸潤させる免疫療法の基盤技術を開発している。以下3つの技術のいずれも主たる実験結果は得られたので、今後論文作製に向けたデータ取りを急ぐ。 1) HLA-DRB1*04:05とHLA-DRB1*08:03について、ペプチド結合実験系を構築した。質問学習による実験計画を立て、HLA-DRB1*04:05分子結合性ペプチドの解析を4ラウンド行った。この時点までのペプチドの結合値を用いてSK-SVMを基盤とするアルゴリズムを作製し、未知の11-merペプチドの結合予測を行ったところ、世界の自動予測サイトと比べて大幅に予想能の高いplatformを作製できていた。さらに4ラウンドの質問学習を追加し、論文発表をする。また、予測platformを用いて自己免疫疾患の標的抗原についてHLA結合性ペプチドを同定している。 2) 新規ミセル溶剤に変異のない腫瘍ペプチドを懸濁して皮内注射する方法は、細胞傷害活性の高いペプチド特異的T細胞を誘導できることがわかった。その理由として、ペプチドをリンパ節の樹状細胞に効率よく届け、生体内で長期メモリーを担う堅牢なT細胞を誘導できるためであることが確認できた。 3) 異なる腫瘍に共通に高発現される腫瘍抗原の野生型アミノ酸配列をもつHLA class I, class II結合性ペプチドをそれぞれ同定し、T細胞の誘導を確認した。誘導されたCTLからTCRのクローニングも成功し、野生型配列を標的にした場合でも十分生体内で高い腫瘍制御活性を示すことがわかった。 4) ヒトPBMCを使ったペプチド反応性T細胞のフローサイトメトリーを使った測定法について培養法を改善し、感度よく定量解析できるようになった。方法の論文を準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
腫瘍血管ECの抗原提示能を活かして、腫瘍抗原特異的T細胞を腫瘍組織へ浸潤させる技術を開発した。 1) HLA-DRB1*04:05とHLA-DRB1*08:03発現細胞を作製し、特許を取得した方法で修飾した任意のアミノ酸配列のペプチドの結合能を測定する方法を確立した。それらの結合値を使って、未知のアミノ酸配列のペプチドの結合能を予測するplatformを、NECと共同で開発した。SK-SVMを基盤とするplatformをIEDBに登録された結合値で初期トレーニングしたのち、質問学習法の手法を用いてランダムなアミノ酸配列のペプチドの結合値を加えて予測精度を向上させた。HLA-DRB1*04:05は4ラウンド目まで質問学習が終わり、8ラウンドまで予定している。 2) 新規ミセル溶剤を使ってMHC class I, class II結合性ペプチドを優先的に樹状細胞に届け、生体内で高い抗腫瘍活性を維持するメモリーT細胞を誘導できないか、マウスを免疫して調べた。非メチル化CpGを添加し、ミセルのあるなしを比較したところ、ミセルで免疫したマウスには、高い抗腫瘍活性が観察された。誘導されたT細胞は生体内で長期記憶を担うメモリーT細胞の表現型を有していた。現在、皮内注射で投与したペプチドが選択的に樹状細胞に提示されるかどうかを調べている。 3) 腫瘍免疫では個々の患者で異なるneoantigensを標的とした免疫療法が注目されているが、個人の腫瘍中のすべての腫瘍細胞を駆逐し、がん患者に共通な腫瘍抗原を標的とした免疫療法の方が、適応範囲が広い。そこで、天然の配列の腫瘍抗原ペプチドを認識するT細胞を樹立し、TCRを解析した。それらのT細胞を使ってどの程度まで抗腫瘍活性を高めることが可能か、担癌マウスを使って調べている。
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Strategy for Future Research Activity |
HLA結合性ペプチドを用いた免疫療法を、臨床応用できる抗腫瘍活性が高い治療法にするために必要な基盤技術を確立する。 1) HLA class II分子結合性ペプチド予測platformは、SK-SVMアルゴリズムが優秀で、初期学習の段階ですでに世界の公開自動予測サイトの結合能を大きく凌ぐ実数値予測が達成できた。特に、任意のタンパク質中にHLA結合性ペプチドを実測値でランキングする能力に優れる。そこで、これまでにHLA-DRB1*04:05とHLA-DRB1*08:03に関連する自己免疫疾患の自己抗原タンパク質中のHLA結合性ペプチドを同定した。高結合のペプチドについてBLAST homology検索を行い、交差性に認識されうる病原体由来のペプチドを同定した。今後、これら病原体あるいは自己抗原由来のペプチドが実際に提示されるか、前後の配列を含むペプチドの結合活性を調べる。結合するなら、今後、患者にペプチドを認識するThが増えているかどうか、調べたい。 2) 新規ミセル溶剤の作用機序について論文をまとめる。 臨床応用を目指し、前臨床試験に足るデータをまとめて論文発表する。 3) 自然なアミノ酸配列の腫瘍抗原ペプチドを用いた抗腫瘍免疫療法の検証 TCR遺伝子を同定できた新規腫瘍抗原の野生型ペプチドを認識するCTLクローンを用いて、腫瘍特異的Th、抗原提示作用薬U2317、との併用療法のin vivo抗腫瘍活性を調べ、論文発表する。
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Causes of Carryover |
次年度の、ミセル溶剤の体内動向を追う実験と、担癌マウスを長期免疫する効果を調べる実験に必要なマウスの飼育費を確保するため。
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Research Products
(20 results)
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[Journal Article] A phase I study of multi-HLA binding peptides derived from heat shock protein 70/glypican-3 and a novel combination adjuvant of hLAG-3Ig and Poly-ICLC for patients with metastatic gastrointestinal cancers: YNP01 trial2020
Author(s)
Nakajima M, Hazama S, Tamada K, Udaka K, Kouki Y, Uematsu T, Arima H, Saito A, Doi S, Matsui H, Shindo Y, Matsukuma S, Kanekiyo S, Tokumitsu Y, Tomochika S, Iida M, Yoshida S, Nakagami Y, Suzuki N, Takeda S, Yamamoto S, Yoshino S, Ueno T, Nagano H
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Journal Title
Cancer Immunol Immunother
Volume: 69
Pages: 1651-1662
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Development of a novel monoclonal antibody that binds to most HLA-A allomorphs in a conformation-dependent yet peptide-promiscuous fashion.2020
Author(s)
Komatsu T, Shimizu T, Kanoh M, Miyakawa T, Satta Y, Yasukochi Y, Fujimoto R, Tada M, Machida K, Kataoka S, Udaka K
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Journal Title
Immunogenetics
Volume: 72
Pages: 143-153
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Identification of a Promiscuous Epitope Peptide Derived From HSP702019
Author(s)
Matsui H, Hazama S, Tamada K, Udaka K, Irie A, Nishimura Y, Miyakawa T, Doi S, Nakajima M, Kanekiyo S, Tokumitsu Y, Shindo Y, Tomochika S, Yoshida S, Iida M, Suzuki N, Takeda S, Yamamoto S, Yoshino S, Ueno T, Nagano H
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Journal Title
J Immunother
Volume: 42
Pages: 244~250
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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