2020 Fiscal Year Research-status Report
腫瘍血管内皮細胞の抗原提示能を活かした次世代がん免疫療法の基盤研究
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19K07775
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
宇高 恵子 高知大学, 教育研究部医療学系基礎医学部門, 教授 (40263066)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 血管内皮細胞 / 抗原提示 / MHC分子 / クロスプレゼンテーション / T細胞 / 腫瘍 / 浸潤 / 抗原特異的 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々が明らかにした腫瘍血管内皮細胞(EC)の抗原提示能を活かして、腫瘍組織にT細胞を動員するペプチド免疫療法を開発した。その過程で、NECと共同で、任意のタンパク質中に存在するHLA class II結合性ペプチドを高い精度で予測する機会学習のplatformを作製した。日本人に頻度が高く、複数の自己免疫疾患とも関連するHLA-DRB1*04:05、DRB1*08:03について、結合性ペプチドの同定が可能になった。これら2種の他、多くのHLA alleleに共通に結合するペプチドに絞り込んで悪性腫瘍に対するペプチド免疫療法のデザインをした。 さらに、ペプチド免疫により、高い抗腫瘍活性をもつT細胞を誘導できる免疫方法(ペプチド、CpGをミセル溶剤に懸濁して皮内注射する)を開発し、その機序を明らかにした。この方法で担癌マウスを治療してin vivo抗腫瘍活性を比較した。 予定してはいなかったが、世界でトップレベルの性能をもつMHC class II分子結合性予測platformを作製できたことから、それを活用して、自己免疫疾患に関連する自己抗原ペプチドを、ICI治療中に発生したACTH単独分泌不全症およびsarcoidosisについて同定した。まず候補となる自己抗原タンパク質に存在するHLA-DRB1*04:05、DRB1*08:03結合性ペプチドを上記platformを用いて同定し、結合活性を調べた。興味深いことに、BLASTサーチの結果、それらにはそれぞれ、病原微生物のタンパク質と7-9アミノ酸の完全一致がみつかった。最終年度に、患者末梢血から誘導した自己抗原を認識するTh細胞が、それら病原体由来ペプチドを交差性に認識するかどうか調べたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ECが腫瘍抗原をHLA分子に提示し、ヘルパーT細胞(Th)や細胞傷害性T細胞(CTL)を抗原特異的に腫瘍組織に浸潤させるメカニズムを明らかにし、腫瘍制御効果の高いペプチド免疫療法の開発を行った。 1)Thに抗原を提示するHLA-DRB1*04:05分子について、NECと共同で8ラウンドの質問学習に基づくペプチド結合実験を行い、ペプチドの結合性を実数で予測するplatformを作製した。腫瘍抗原や自己免疫疾患の標的タンパク中の結合性ペプチドを同定し、世界の予測platformと比較した。HLA-DRB1*08:03分子については、質問学習はしていないが、多数のペプチド結合データを得て、任意のタンパク質中に精度よく結合性ペプチドを予測することが可能になった。 2)上記2つのHLA class II分子について、いくつかの腫瘍抗原ペプチドおよび組織特異的自己免疫疾患の標的タンパク質中の結合性ペプチドを同定し、それらを認識するThをマウスとヒト末梢血単核球から誘導し、TCR遺伝子のcloningをして特異性を確認した。 3)腫瘍抗原特異的Th、CTLを誘導して担癌マウスを治療する実験を行い、高い腫瘍制御効果が確認できた。標準治療との併用で効果がさらに高まり、再発しない個体も出るようになった。最終年度に同様の抗腫瘍活性がMHC class IIのconditional KO動物でもみられるか、調べる予定である。 4)野生型のゲノム配列をもつMHC結合性ペプチドを非メチル化CpGとともにミセル溶剤に懸濁してマウスに皮内注射をすることで、再現性よく攻撃的CTLを誘導できることが明らかになった。ミセルの作用機序を明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
腫瘍抗原ペプチドを同定し、T細胞を誘導することにより、抗腫瘍活性が高く、副作用の乏しい免疫療法を開発できた。数報の論文にまとめ、臨床試験の準備をしたい。 当初の予定には入っていなかったが、HLA class II結合性ペプチドの予測が世界のトップレベルの精度で可能になったため、悪性腫瘍に対する免疫チェックポイント阻害抗体療法で治療中の患者に多発する組織特異的自己免疫疾患や、現時点で病因がわかっていないHLA class II関連自己免疫疾患について、標的抗原ペプチドを同定する試みを進めたい。HLA class II結合性ペプチドの同定はほぼ終わったため、今後、患者あるいは健常人の末梢血単核球からペプチド反応性T細胞が誘導されるかどうか調べたい。
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Causes of Carryover |
本研究を完成させるために必要であったヒト末梢血からペプチド反応性T細胞を誘導する培養法および検出法の開発の部分は、これまで他の研究費(新学術領域ネオ・セルフ)から負担していた。しかし、新学術領域研究が今年度で終了するため、論文発表と研究のまとめに必要な費用を、本研究から来年度に残しておく必要があった。 また、本研究で作製したHLA class II分子結合性ペプチドの予測platformが予想以上の性能を示し、世界でも群を抜いて予想精度、カバー率とも優れていることがわかった。そこで、この優位性を活かして、予定していた腫瘍抗原ペプチドに加え、将来診断薬や検査薬の開発に資することができる自己免疫疾患関連ペプチドを急いで同定し、特許等の権利化をはかる必要がでてきた。そのため、次年度にペプチドの合成、結合実験ができるよう、研究費をできるだけ多く残す必要がでてきた。
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[Journal Article] A phase I study of multi-HLA binding peptides derived from heat shock protein 70/glypican-3 and a novel combination adjuvant of hLAG-3Ig and Poly-ICLC for patients with metastatic gastrointestinal cancers: YNP01 trial2020
Author(s)
Nakajima M, Hazama S, Tamada K, Udaka K, Kouki Y, Uematsu T, Arima H, Saito A, Doi S, Matsui H, Shindo Y, Matsukuma S, Kanekiyo S, Tokumitsu Y, Tomochika S, Iida M, Yoshida S, Nakagami Y, Suzuki N, Takeda S, Yamamoto S, Yoshino S, Ueno T, Nagano H
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Journal Title
Cancer Immunol Immunother
Volume: 69
Pages: 1651-1662
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Development of a novel monoclonal antibody that binds to most HLA-A allomorphs in a conformation-dependent yet peptide-promiscuous fashion.2020
Author(s)
Komatsu T, Shimizu T, Kanoh M, Miyakawa T, Satta Y, Yasukochi Y, Fujimoto R, Tada M, Machida K, Kataoka S, Udaka K
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Journal Title
Immunogenetics
Volume: 72
Pages: 143-153
DOI
Peer Reviewed
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