2021 Fiscal Year Research-status Report
大腸癌の高度危険度群マウスにおけるFusobacteriumの役割
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19K07779
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
鈴木 興秀 埼玉医科大学, 医学部, 講師 (90726324)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀内 大 埼玉医科大学, 医学部, 講師 (30608906)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 大腸癌 / マイクロサテライト不安定性 / Fusobacterium / 臨床検体 / 細菌DNA検出系 / 動物モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
Lynch 症候群の大腸癌はマイクロサテライト不安定性(MSI-high)を有し、その結果として、腫瘍細胞の体細胞遺伝子変異に由来する新規癌抗原(neoantigen)が出現しやすいことが示唆されている。近年、進展した大腸癌組織からGram陰性嫌気性細菌Fusobacterium nucleatum (F. nucleatum)が高頻度に検出されることが報告されている。以上を鑑み、本研究では、Lynch 症候群に由来する大腸癌の進展にF. nucleatumが及ぼす影響を明らかにすることを目指す。本年度までに、大腸癌臨床検体を用いてF. nucleatum検出系を構築し、解析を進めてきた。また、F. nucleatum特異的な核酸プローブを用いたin situ hybridization法により大腸癌組織におけるF. nucleatumの局在様式を検討したところ、腫瘍組織においてfocalな分布傾向が明らかとなった。 in vitro実験系においても安定して複数のF. nucleatum株が嫌気培養できるようになり、大腸癌細胞株培養系にF. nucleatumを接種すると、一定時間経過後に細胞増殖が促進されることが確認された。 臨床腫瘍を対象とした研究において、腫瘍細胞内にF. nucleatumが存在するとの報告が散見される。しかし、F. nucleatumを腫瘍細胞培養系に接種したところ細胞内侵入は確認できなかった。腸内細菌科に分類される一部の細菌は、細胞内に感染する際に、細胞のクラスリン非依存性エンドサイトーシスを亢進させ、その結果、細胞外成分の細胞内への取り込みを促進することが知られている。そこで、上記の性質を持つ腸内細菌科細菌と蛍光色素で標識したF. nucleatumを同時に腫瘍細胞株培養系に接種すると、F. nucleatumが細胞内に取り込まれることが観察された。このことより、臨床腫瘍で報告されているF. nucleatumの細胞内感染は、腫瘍組織内の細菌nicheの影響により引き起こされている可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
前年度に引き続き、1) F. nucleatum感染によるLynch症候群モデルマウス確立に向けてのマウス自家繁殖の安定化と遺伝型解析の安定実施体制の構築に取り組んだ。しかし、前年度から問題となっているMsh2loxP/loxP とVillin-Creマウスの掛け合わせによる繁殖効率が思うように上がらないことに加えて、食殺が激しく、匹数確保が難航している。それに加えて、仔マウスのgenotypingを行うと、F1マウスにもかかわらずMsh2loxP/loxP遺伝子発現が確認できない個体しか得られていない。モデルマウスの作製が進展していないことから予定していた実験を行うことができず研究に遅れが生じている。そのため、もう1年間、本研究の期間延長を申請し、承認された。
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Strategy for Future Research Activity |
F. nucleatumの感染実験を行うため、本年も継続してMsh2loxP/loxP マウスとVillin-Creマウスを掛け合わせによるモデルマウス作成に努める。加えて、難航しているマウスモデルを補完するため、ミニ臓器(腸管オルガノイド)を用いた3次元感染モデルを作製し、生体内臓器構成に準じた状態でF. nucleatum感染が引き起こす細胞・組織応答について、in vitro解析を行う。
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Causes of Carryover |
当該年度は、マウスの繁殖の問題から予定していたin vivo実験が実施できなかった。また、学会発表を行うには至らず、学会参加費及び旅費を使用しなかった。以上が、次年度使用額が生じた主な理由である。次年度はin vivo感染実験から得られる腫瘍検体を用いた解析、もしくは、in vitroでのミニ臓器を用いた感染実験を予定しており、遺伝子発現外注解析費、細胞分離試薬、細胞培養用プラスチック器具、オルガノイド培養用培地などが必要となる。次年度使用額は、これらの購入費に併せて充てる。
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