2020 Fiscal Year Research-status Report
バイオマーカーとしてのT細胞免疫機能評価システムの構築
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19K07783
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
岩井 佳子 日本医科大学, 大学院医学研究科, 大学院教授 (90362467)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 免疫チェックポイント / バイオマーカー |
Outline of Annual Research Achievements |
免疫チェックポイント阻害薬(immune checkpoint inhibitor: ICI))は、非小細胞肺癌(Non-small cell lung cancer: NSCLC)の新規の1次治療および2次治療以降の選択肢となり薬物療法を大きく変えたが、治療効果を予測する感度の高いバイオマーカーによる患者選択の確立が臨床的課題である。近年NSCLCの予後因子および効果予測因子としての血中可溶性PD-L1(soluble PD-L1:sPD-L1)の意義が報告されている。sPD-L1にはPD-1に対する結合能するものと結合しないものがある。我々は「PD-1結合能を有するsPD-L1(soluble PD-L1 with PD-1-binding capacity: bsPD-L1)」に注目して、bsPD-L1を特異的に検出するELISAを確立した。本研究は、このELISAシステムを用いてNLCLC患者の血液中のbsPD-L1を測定し、ICIの治療効果との関連を調べていることを目的とする。 開発したbsPD-L1 ELISAキットは、市販のsPD-L1 ELISAキットよりも検出率が高く、高感度であるが、現状では50%以上の検体が検出感度以下となる。そこで、精度および感度を高めるため、ブロッキング剤および検出方法について検討を行った結果、化学発光による検出で検出感度が上がり、測定可能領域が広範囲となった。一方、開発したキットの製品化を目指すため、材料として用いるPD-1蛋白質の大量精製を行う条件検討を行った。これまでにICIが投与されたNSCLCを対象に,ICI治療開始前後の血中bsPD-L1の測定を行っているが、今後さらに症例数を増やす予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度はコロナ禍による実験中断のため、実験に遅れが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後症例数を増やして、多数の検体を測定するために、PD-1蛋白質の大量の精製を行っているが、PD-1蛋白質の発現量を増やすと、リガンドとの結合能が低下するため、発現量および結合能をともに高い水準を満たす細胞培養の条件を引続き検討する必要がある。リガンド結合能を維持したPD-1蛋白質を十分量確保した上で、臨床検体の測定を行う計画である。PD-1/PD-L1シグナルはがん免疫だけでなく、感染症や移植免疫などT細胞が関与するさまざまな疾患に関与している可能性がある。そこで、bsPD-L1が肺癌だけでなく、その他のがんの予後やICI効果を予測する診断マーカーとして有用化どうかを検討するため、消化器癌(胃癌、大腸癌)における患者の血液検体中のbsPD-L1を測定し、予後やICI治療効果との関連を調べる。さらに移植免疫におけるbsPD-L1の診断マーカーとしての有用性を検討するために、肝臓移植患者の血液中のbsPD-L1を測定し、拒絶応答との関連について調べる。
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Causes of Carryover |
本年度はコロナ禍による実験中断の影響で研究遂行が不可能な期間があった。 そのため2020年度の助成金の一部を次年度使用額として繰り越すこととし、主に遺伝子工学関連試薬や細胞培養試薬、抗体等の購入を予定している。
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