2020 Fiscal Year Research-status Report
がんの放射線治療後に起こる免疫反応を利用する改良型・養子免疫療法の開発
Project/Area Number |
19K07790
|
Research Institution | National Institutes for Quantum and Radiological Science and Technology |
Principal Investigator |
武島 嗣英 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 重粒子線治療研究部, 主幹研究員(定常) (10360950)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 放射線治療 / 免疫治療 / 樹状細胞療法 / がん結合抗体 / がん反応性CTL |
Outline of Annual Research Achievements |
癌患者や担癌動物が放射線治療を受けると、放射線照射後に体内に生じる癌の死細胞や免疫刺激物質(DAMPs等)により、腫瘍に対する免疫反応が引き起こることが近年の研究でわかってきた。この免疫反応の過程で誘導される癌特異的キラーT細胞(CTL)は、照射で生き残った癌細胞を殺傷して放射線治療の効果に影響を与える。CTL数を増幅する目的で免疫治療を追加し、それぞれの単独治療を上回る効果を期待する基礎・臨床研究は数多くあり、一部の放射線・免疫併用療法は保険適用になったものの、現状では満足な結果は得られていない。本研究では、放射線治療で血中に誘導される癌結合抗体(TAb)と、古くから研究されている免疫療法のひとつである樹状細胞療法の2つに着目し、放射線・樹状細胞併用療法の改良版の開発を動物(マウス)を用いて行う。
昨年度までに次の実験結果を得ていた。B16-OVA癌細胞株をC57BL/6マウスに移植した担癌マウスを用いて、(1) 放射線治療後、血中にTAbの増加を確認した。(2) このTAbは骨髄由来樹状細胞(BMDC)上に発現するFc受容体に結合してTAb-BMDC複合体を形成した。(3) (2)の複合体を用いる樹状細胞療法(TAb-BMDC療法)は、X線療法と併用したとき、X線治療単独またはX線併用BMDC療法よりも高い治療効果を示した。
当該年度は、TAb-BMDC療法の効果が従来のBMDC療法のそれを上回った理由を探るために、それぞれの治療後に誘導されるがん特異的CTLの数を調べる目的で、腫瘍内とリンパ節内に誘導されるがん特異的CTL(CD8+OVA-Tetramer+細胞)の数を測定した。その結果、X線併用BMDC療法後に比べてX線併用TAb-BMDC療法後のほうがより多くがん特異的CTLが誘導されており、この数が治療効果と対応することがわかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
設定した仮説の妥当性を支持する結果が得られている。
|
Strategy for Future Research Activity |
がんの治療用に移入したBMDCまたはTAb-BMDCがどのようにがん反応性CTLを誘導するかのメカニズムがまだわかっていない。それらを解明するためにBMDC/TAb-BMDCの体内動態や、それらの活性化マーカーの発現などを調べて、誘導されるがん反応性CTLの数と関連を明らかにし、最終的にX線併用TAb-BMDC療法の優位性を証明する。
|
Causes of Carryover |
今年度は研究室に既存の試薬で賄えた部分が大きく、当初予定よりも経費が少なかった。次年度は適正な利用に努める。
|