2020 Fiscal Year Research-status Report
Area specific representation in mouse visual cortex
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19K07793
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉田 盛史 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 助教 (30723259)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 視覚 / 大脳皮質 / デコーディング / イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、マウス大脳皮質高次視覚野の情報表現の解明を目的とする。マウスの高次視覚野には他の哺乳類と同様に形と動きを担う2つの経路があり、そのうち形の処理に関与するとされる外側高次視覚野での視覚情報処理を調べる目的で、覚醒下マウスのV1、及び高次視覚野のLM、LIから二光子カルシウムイメージングにより自然画像に対する視覚応答の記録を行った。予備的解析の結果、V1、LMの神経細胞は視野内の比較的限局した位置の情報を表現していたのに対して、LIの神経細胞は比較的広い範囲の視覚情報を統合していることを示唆する結果を得た。また、細胞集団に含まれる情報を評価する目的で神経活動から提示した画像を予測する画像再構成の手法を用いて解析を行った。その結果、V1、LMからは同程度の画像を再構成することができた。それに対して、LIでは画像の再構成の精度は低く、LIの情報処理はV1、LMと異なることが示唆された。 視覚弁別行動に必要な視覚領野を探索する目的で、マウスに対して単純な静止図形の弁別課題を学習させた。課題学習後、マウスが刺激図形の全体を手掛かりとして課題を解いているのか、もしくは刺激の一部を使って課題を解いているのかを調べたところ、マウスは図形の一部を使って、弁別課題を遂行していることが示唆された。課題遂行中の視覚野周辺の神経活動を記録したところ、訓練に使用した図形に対しては一次視覚野、高次視覚野を含めた広い領域で視覚応答が観察された。報酬と関連付けられた刺激と関連付けられていない刺激に対して応答する視覚野の領域は両者で重複していたが、その活動差が大きい領域に対応する視野の位置を手掛かりとして、マウスが行動応答を示す傾向にあった。このことからマウスは報酬刺激と無報酬刺激に対する活動差が大きい部分の視覚入力を手掛かりとして図形を弁別していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マウス視覚野間での機能差を解明する目的で、覚醒下マウスの一次視覚野(V1)、及び形の情報処理に関与するとされる外側高次視覚野(LM, LI)から、二光子カルシウムイメージングによる神経活動記録を行った。予備的な解析の結果、V1とLMは比較的同様の性質を示したのに対して、LIは比較的広い視野の情報を集めている傾向を示した。このLIの性質により、V1を基にした解析手法の適用が難しいことが示唆された。この研究に関してはある程度進捗していると考えられる。 計画では、動きの情報処理についても調べる目的で、自然動画に対する視覚応答を取得する予定であったが、こちらに関しては現在データの取得中であり、今後の課題である。こちらに関しては、予定からやや遅れる傾向にある。 また、図形の弁別に関与する脳領野を調べる目的で、マウスでの視覚弁別の行動課題の実験系を確立した。課題遂行に対しては特定の領野でなく、一次視覚野及び高次視覚野全体の活動が変化する傾向にあった。この課題を訓練したマウスでは、刺激図形の全体ではなく、一部の場所を手掛かりとして課題を遂行していることを示唆する結果を得た。また、課題遂行中の神経活動の測定を行い、解析により、視覚野周辺の応答パターンとマウスの行動との対応を示唆する結果を得た。また、学習途中の神経活動の記録や、視覚野のみならず大脳皮質背側部全体の活動の記録を行った。予備的な結果ながら、薬理学実験によりこの行動課題への視覚野の関与や前頭葉の関与を示唆する結果を得た。また、前頭葉から視覚野への投射にはトポグラフィカルな構造があることを示唆する結果を得た。こちらの実験に関しては、予期せず、マウスの視覚弁別の行動戦略を示唆する結果を得ており、また今後の発展を示す予備実験も得られており、十分な進捗が見られた。
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Strategy for Future Research Activity |
高次視覚野での情報処理の研究に関しては、引き続き、形の情報処理に関する外側高次視覚野からの神経活動記録を継続する。特に、LIの性質がV1、LMと比べ異なる傾向にあり、このためにV1の神経活動を基にした解析手法が適用できないことが示唆された。今後はLIの性質をより詳細に解析するとともに、そこから情報を引き出すことができる解析手法の開発を目指す。また、動きの情報処理に関与するとされる前方あるいは内側に位置する高次視覚野からの神経活動記録も行う。特に、画像再構成の手法を用いて集団活動に含まれる情報の評価を行う。画像再構成の解析手法に関しては、静止画に対する解析手法は確立しているので、今後は動画の再構成の解析手法の確立を目指す。 図形弁別課題を学習させたマウスでは図形あるいは視野の特定の場所を手がかりとして課題を行っていることを明らかにしたので、この行動に関与する神経回路メカニズムを明らかにする。予備的な薬理学実験の結果から前頭葉の関与を示唆する結果が得られているのでその関与を確かめる。特に前頭葉からのトップダウン入力による視覚応答の修飾が視覚野全体に対して行われるのでなく、視覚野の一部に対して選択的に働くという仮説を立て、その検証を行う。文献報告や自身の予備実験の結果から、前頭葉では、視覚野への投射先のレチノトピーの位置に対応して少しずつ異なる細胞群が投射を送っていることがわかっている。課題中に手がかりとしている視野の位置に対応した細胞群が選択的に活動を変化させているのかなどを明らかにする。
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Research Products
(1 results)