2019 Fiscal Year Research-status Report
身体所有感の神経基盤の研究―サルにおけるラバーハンド錯覚モデルの確立
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19K07794
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
勝山 成美 京都大学, 霊長類研究所, 特定助教 (00291906)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ラバーハンド錯覚 / ニホンザル / 固有感覚 / 身体所有感 / 到達運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ニホンザルを対象として、ラバーハンド錯覚のモデル動物の確立を目指すものである。 ラバーハンド錯覚では、本物の手とは異なる位置や、動きをする手を視覚刺激として被験者に与える必要があるが、今回の実験ではバーチャル リアリティ(CG)による手の映像を用いることにした。 タッチパネルを用いて、サルに標的に対する到達課題を訓練する。サルの手を遮蔽するように別のディスプレイを設置し、そこにCGによるサルの手の画像を呈示する。到達課題の開始時には、サルが自分の手を見ることが必要であるため、CGを呈示するディスプレイには透過型の機種を選定した。また、透過型ディスプレイは自発光を発しないため、背後に光源を設置する必要がある。そのため、非透過時にディスプレイ上の画像がもっともよく見える光源を調べた。これらの装置は2020年度中に設置予定であったが、新型コロナウィルスの流行により延期されている。 ラバーハンド錯覚における手の所有感の変化については、ヒトの実験におけるproprioceptive driftに相当する、固有感覚による手の位置感覚の変化を利用して評価することにした。まず、サルに標的に手を伸ばしてタッチする到達課題を訓練する。次に、到達運動を行なう前に、本物の手とは異なる位置にあるCGの手を透過型ディスプレイ上に呈示し、到達運動を行なわせる。もしサルがCGの手を本物の手と感じているならば、スタート地点が異なるため、その後に行なう到達運動において手が到達する位置がずれることが予想される。サルの到達課題については、今年度中にほぼ訓練を終え、サルはスタート地点に7秒間、手を置いた後、その周辺に提示される標的に向かって到達運動ができるようになった。 2021年度は実験装置の完成を急ぎ、CG映像を用いて到達運動を行なわせ、その評価を行なうことを目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
この実験では、上記の「実績の概要」でも述べたように、本物のサルの手の位置や動きと、サルが見る視覚的な手の位置や動きに実験的な乖離を作りだす必要がある。そのため、CGで作成したリアルなサルの手の映像を呈示することにした。しかし、到達課題の開始時に、手をスタート点に置く時は、サルが本物の手を視認する必要がある。その後、サルの手の視覚情報を本物からCG画像に切り替えて到達運動を行なわせる。そのため、CGを呈示するディスプレイは透過と非透過の切り替えができる機種を選定した。しかし、このようなディスプレイでは、非透過モード時に、呈示した画像の色の薄い部分で背後の物体が透けて見えることがわかった。検討の結果、光を透過・遮断する特殊ガラスを透過型ディスプレイの背後に二枚合わせにすることで、このような背後の透過を防止できることがわかった。 また、透過型ディスプレイは通常のディスプレイとは異なり、自発光を発しないため、背後に光源を設置する必要がある。ディスプレイの背後から均等に照明を行なうのが理想だが、透過ディスプレイの背後には到達運動を行なっているサルの手があるため、光源はディスプレイを取り囲むように設置せざるを得ない。そのため、数種のLED照明を取り寄せて試験を行ない、もっともディスプレイが見やすいものを選定した。 以上の透過ディスプレイの選定、背景の透過の防止、および光源の機種選定と組み合わせに想定外の時間がかかった。ただ、機種選定と配置等については目途が立ち、2020年度中に装置を完成させる予定であった。しかし新型コロナウィルス流行の影響で研究者、業者がともに活動できなくなり、年度内の設置を諦めざるを得なくなった。 サルの到達課題の訓練については、通常のディスプレイを使用して概ね完成しつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究計画は以下の通りである。 1. 実験装置の完成:タッチパネルと透過型ディスプレイ・透過型特殊ガラスによる到達課題計測装置を組み上げる。必要な部材のほとんどは業者の元に揃っているため、新型コロナウィルス流行による活動自粛の解除後に最優先で行なう。 2. モンキーチェアの改造:これまで使用していたモンキーチェアでは、サルが手を伸ばしてもディスプレイの一部までしか手が届かないため、サルの体を前方に移動させるようにチェアの改造を行なう。 3. 新装置での到達課題の完成:上記の実験装置とモンキーチェアの改造後、新装置でサルに到達運動課題を行なわせる。 4. CGの手を呈示して到達運動のずれを検出する:サルが新装置で到達課題を行なえるようになったら、CG画像の手を呈示して、CGの手に対して固有感覚による位置感覚を感じていることを示す到達点のずれが見られるかどうかを調べる。
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Causes of Carryover |
当初、初年度予算にバーチャル リアリティによるサルの手の映像作成を盛り込んでいたが、透過型ディスプレイの選定・設置作業の遅れによりコンテンツの作成まで研究が進まず、業者に依頼しなかったことがもっとも大きな要因と思われる。
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