2020 Fiscal Year Research-status Report
脳血流の増強による神経修飾作用:認知症予防のためのエビデンス創出
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19K07795
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
正本 和人 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (60455384)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 脳微小循環 / 神経血管カップリング / 大規模画像解析 / 行動解析 / 遠隔モニター |
Outline of Annual Research Achievements |
実験面では活動の制約により計画が大幅に遅れている。本年度は、これまでに蓄積されたデータの再解析および新規の解析手法の開発に注力した。具体的には、在宅勤務により遠隔での動物の行動モニターを行う必要があり、汎用のCCDカメラや赤外線カメラで撮像される飼育環境下での動物の行動モニター画像から実験動物の行動量や体重変化を推定する手法を開発し、論文にまとめた(査読中)。また、二光子顕微鏡で取得される実験動物の脳内の血管構造および細胞形態に関する膨大な画像データを自動解析し、血管径、血管体積、細胞形態、および細胞の遊走量を定量化するためのソフトウエアを作成し、論文にまとめた。前年度に引き続き、マウスを用いた学習評価実験において、条件付けによるマウスの水飲み行動を精度よく検出するための装置および画像解析の手法についてさらに改良を重ね、ソフトウエアによる提案法が目視によって判定された正答率と同等の成績であることを確認した。脳の活動時に見られる脳血流の一過性の増加に関して、従来より知られているコリン作動性ニューロンによる脳血管調節のメカニズムと皮質グリア細胞を介した脳血流調節のメカニズムは、独立で血管側の作用点が異なることを明らかにし、論文発表をおこなった。全般的に新規の実験によるデータの取得は当該年度の研究活動および現状においても引き続き制限されてはいるが、行動の制限が解除されれば当初の計画通りに実験の遂行が可能であると判断される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初予期していないこととして、社会環境の変化による研究実施の制約があげられる。しかし、こちらによる影響は一時的なものであるということであれば、正常化に近い形での実験の実施が次年度以降は可能であると見通される。当該年度においては実験面での進捗は当初の計画に対して芳しくないが、解析面で大きく進展しており、前年度に得られた成果は引き続き次年度以降の研究発展の蓄えにもなっている。よって、現段階での総合的な評価としては、やや遅れていると判断される。学会面では徐々にオンラインでの講演が増加しており、双方向の議論の醸成は期待できないものの成果発表の場としては十分に機能している。引き続き、国内開催の学会を中心に成果の積極的な発信に努める。一方、国際学会での発表の場は、引き続き制約された状況にある。各国の状況が異なることやリアルタイムの開催による時差の問題等もあり、欧米を中心とした国際会議での論文発表は積極的な参加が難しい状況である。このように先の展望が見通せない現況において、当初の計画通りにプロジェクトを遂行するためには、引き続きできることからできる範囲で研究を進めていくのが最善の方策であると判断される。一方で大規模画像データの解析支援を目的としたソフトウエアの開発や画像解析および論文執筆に関しては、在宅勤務によるポジティブな側面が現れており、着実に進展している状況である。次年度以降は、オンラインでのミーティングを促進するためのラボ内でのインフラ整備をもう少し充実させる必要があるかもしれない。
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Strategy for Future Research Activity |
社会情勢の好転によって、新規の実験に関する当初の遅れを取り戻すことを第一の目標とする。しかし、先が見通せない現状では、これまでに蓄積したデータの再解析による課題の目的達成もプランBとして想定する。本課題の達成を目的とした実験の精度は既に多くの検討を重ねており、十分な成果が期待できる精度が確保されている。また、遠隔による行動制限の効果もあり、実験動物をモニターするための周辺環境も充実しており、さらに行動制限下で進められた解析技術の向上により、得られたデータに対する分析面でのスキルも飛躍的に向上している。加えて行動制限による本研究課題へのエフォート率の向上もあり、最終年度における目標達成は十分に可能な状況であると判断される。特に国内外での学会発表を経ない形での成果の発表に関しては、投稿論文による直接的な最終報告が可能であり、本年度の実績を踏まえて次年度も着実な論文発表数が見込まれる状況にある。
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Causes of Carryover |
942円端数として未使用額に計上された。
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Research Products
(8 results)