2019 Fiscal Year Research-status Report
両手の協調運動の基盤となるサル運動関連皮質領野の半球間神経連絡の解析
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19K07796
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
宮地 重弘 京都大学, 霊長類研究所, 准教授 (60392354)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 両手の協調運動 / 半球間神経投射 / マカクサル / 神経トレーシング / 一次運動野 / 前頭葉皮質 / 補足運動野 / 運動前野 |
Outline of Annual Research Achievements |
ニホンザル1頭の両側一次運動野の上肢領域を電気生理学的にマッピングし、両側の腕(肘)領域および手(指)領域を同定した。それぞれの領域に異なる神経トレーサー(fluoro-ruby, fluoro-emerald, fast blue, diamidino yellow)を注入した。ホルマリン灌流後、脳の薄切切片(50 micron)を作成した。8枚おきの切片をスライドガラスに貼り、蛍光顕微鏡で観察、Neurolucidaを用いて解析範囲を撮像し、前頭葉における逆行性ラベルの分布を確認した。左半球の腕領域に注入したfluoro-emeraldを除き、いずれのトレーサーでも、逆行性ラベルされた細胞体は補足運動野および運動前野に見られた。fluoro-emeraldは、皮質下の白質に入ったため、ニューロンラベルは確認できなかった。右および左の手領域に注入したfast blueおよびdiamidino yellowによって逆行性ラベルされた細胞体は、ほとんどがそれぞれの注入部位と同側に見られた。運動前野の中では、主に腹側運動前野にラベルが集まっており、背側部のラベルは少なかった。右半球の腕領域に注入したfluoro-rubyによる逆行性ラベルは、同側のみならず反対側の補足運動野および運動前野(背側部)にも見られた。ただし、ラベルされたニューロンの数は、同側の方が多かった。以上の結果は、一次運動野の腕(肘)領域は両側の前頭葉(捕捉運動野および運動前野)からの入力を受けるが、手(指)領域は同側の前頭葉からのみ投射を受けることを示す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
年度内に1頭のサルに4種の神経トレーサーを注入し、その結果を解析する予定であったが、解析対象領域の撮像では切片1枚、異なるフィルターごとに700~900枚のコンポジット画像が必要となり、予想以上に時間をとられた。また、左半球の腕領域に注入した神経トレーサーの注入が不全であったため、このトレーサーによる逆行性ラベルが確認できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、切片の蛍光画像撮像に際し、複数のフィルターを自動で切り替えて撮像する装置(電動フィルターホイール)を導入し、作業を効率化する。 神経トレーサー注入に際しては、事前に脳のMRI撮像を行い、注入部位を確認する。
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Causes of Carryover |
蛍光顕微鏡写真の撮像と解析に予想以上に時間がかかり、組織化学的染色を翌年に延期し、組織化学用品を購入しなかったため。 次年度に購入し、次の標本と合わせて染色を行う。
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