2019 Fiscal Year Research-status Report
霊長類大脳皮質ネットワーク機能不全による自己への原因帰属の障害:化学遺伝学的研究
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19K07800
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
足立 雄哉 新潟大学, 医歯学系, 助教 (40625646)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 認知神経科学 / マカクザル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、経験した出来事の自己への原因帰属認知にかかわる霊長類大脳皮質の神経機構を検証し、重要な役割を担う脳ネットワーク経路を調べることを目的とする。 自分や他者が関わる出来事に出会うと、ネガティブなことを過度に自分のせいだと思ったり、逆にポジティブな経験を過度に自分のおかげだと思ったりすることは、健常者であっても珍しいことではない。しかし自己への原因帰属を司る脳メカニズムはいまだ明らかではなく、また時間的に精緻な研究や人為的な干渉を加える研究を行うために侵襲的な実験手法を使用するには、動物に適用できる行動実験系が必要である。本年度は、これまでに研究代表者らが構築してきたマカクザルにおける原因帰属行動課題に、2頭のサルを同時に参加させ、社会的な状況に被験体をおいた行動実験を行った。マカクザルが自分で原因判断をくりかえして自己や他者・そのほかの外的な実体の関わる出来事の原因構造を理解し、また原因構造が変化してもその理解を更新して適切な原因帰属行動をとることができるだけでなく、他者が原因帰属する様子を観察することによっても、自己・他者・外的実体のおかれた原因構造を理解し、そのあとに自分でも出来事の原因判断をすることができることを示唆する結果が得られた。今後このような社会的状況における自己あるいは他者への他者による原因帰属と、自己あるいは他者への自身による原因帰属との関係を調べる行動実験を継続していくとともに、電気生理学的な神経活動記録による関連脳ネットワークを検証する実験を行っていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、複数頭のマカクザルを原因帰属課題に同時に参加するような社会的な状況に被験体をおいた行動実験を行った。自分の判断の繰り返しからだけでなく他者の行動を観察することで原因構造を理解し、その後の状況に適用することができることを示唆する結果が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度構築した社会的な行動実験系を用い、自己あるいは他者への他者による原因帰属と、自己あるいは他者への自身による原因帰属との関係を調べる行動実験を継続していくとともに、電気生理学的な神経活動記録による関連脳ネットワークを検証する実験を行っていく。
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Causes of Carryover |
マカクザルの行動実験・電気生理学実験に使用する機材・消耗品について今年度に計画していた購入を次年度に行うこととしたほか、既に所有する機材・薬品・消耗品を使用するなど研究を効率的に推進した。次年度に計画している実験に必要な電気生理学機材・行動実験機材・消耗品・手術用薬品・飼料の購入費用として使用する。
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