2019 Fiscal Year Research-status Report
急速眼球運動前後での顔画像情報の統合と認知の神経機構
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19K07804
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Research Institution | Dokkyo Medical University |
Principal Investigator |
河野 憲二 獨協医科大学, 医学部, 特任教授 (40134530)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菅生 康子 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 主任研究員 (40357257)
松田 圭司 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 主任研究員 (50358024)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 神経科学 / 眼球運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
私たちは、絶えず眼を動かし、空間内の様々な位置にある対象物を、網膜の内でも感度の高い中心窩に捉らえ、外界を知覚している。特に環境内に人がいると、人の顔に視線が向かうことはよく知られていて、周辺視野で認めた顔に視線を向け、解像度の高い中心窩で捉えなおすことで、ヒトが社会生活を送る上で重要な他者の表情や個体の特定など顔の持つ情報の詳細な認識が可能となる。本研究では、サルを対象として脳から神経活動を記録し、眼が動く前に記憶された顔が、眼が動いた後に見える顔とどのように照合され、統合されていくか調べることにより、脳が行なっている顔の認知機能のメカニズムの理解を進める。具体的には、サル下側頭葉に留置した複数の多点電極からニューロン活動を記録し、様々な空間内の位置に提示された顔画像に対する反応を眼球運動前後で記録し、眼が動く前に記憶された顔が、眼が動いた後に見える顔とどのように照合され、統合されていくか調べる。 令和元年度は、固視課題及びサッケード課題を訓練したサルの下側頭葉に多点電極を留置する手術を行い、術後回復したのち、留置した多点電極からニューロン活動の記録を実施した。サルが固視課題を遂行中に多種の顔画像刺激(様々な表情のヒト、サルの顔と、眉/眼/鼻などその造作)を呈示し、顔造作や顔刺激に反応するニューロンが記録される電極を特定し、それぞれのニューロンの受容野を調べた後、大まかな分類情報(サルかヒトか)と詳細な分類情報(個体や表情)を発火頻度の時間パターンとしてコードしているニューロンの下側頭葉内での空間的分布を調べた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和元年度は、固視課題及びサッケード課題を訓練したサルの下側頭葉に多点電極を留置する手術を行った。電極はTE野とTEO野に置くことができた。術後回復したのち、留置した多点電極からニューロン活動の記録を実施した。サルが固視課題を遂行中に多種の顔画像刺激(様々な表情のヒト、サルの顔と、眉/眼/鼻などその造作)を呈示し、顔造作や顔刺激に反応するニューロンが記録される電極を特定し、それぞれのニューロンの受容野を調べた。ニューロンの下側頭葉内での空間的分布と受容野の関係を調べた。TE野、TEO野両領野から顔画像に反応するニューロンが記録できた。TEO野から記録された顔に反応するニューロンの受容野はTEから記録された顔に反応するニューロンよりも狭いことを示すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では、令和元年度にTE野とTEO野に留置した多点電極からのニューロン活動の記録を継続し、顔造作や顔刺激に反応するニューロンが、大まかな分類情報(サルかヒトか)と詳細な分類情報(個体や表情)を発火頻度の時間パターンとしてコードしているかを確認、同定し、それぞれのニューロンの下側頭葉内での空間的分布を調べる。次に、記録したニューロンのサッケード前後の反応を調べ、短期記憶として保持されたサッケード前の視覚情報が、サッケード運動がトリガーとなって呼び起こされ、サッケード後の情報と照合されることで視空間内に定位され、視覚世界が脳内で再構成される現象がこれらのニューロンにも見られるかを調べる。
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Causes of Carryover |
今年度のニューロン活動の解析では、記録したデータをオンラインで処理し、単一ニューロンの分離を行なっていた。しかしながら、今年度実施した多点電極からの記録には、複数のニューロンの電気活動のクロストークなどがあり、マルチニューロン活動が記録され、解析に用いられていた可能性を否定することができなかった。この問題を解決するため、オフラインでのニューロン活動の分離作業を加える形で解析をすすめるためのソフトウェアの開発を行なったが、時間がかかり、今年度中にオフラインの分離作業に取りかかることができなかった。そこで、次年度に予算を使用し、この解析を進める計画とした。次年度は、動物実験を継続しつつ、オンライン処理にオフラインでのニューロン活動の分離作業を加える形でデータを解析し、論文作成を行なっていく計画である。
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Research Products
(3 results)