2019 Fiscal Year Research-status Report
Neural substrates for interpersonal rhythm entrainment as a social relationship
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19K07810
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
戸松 彩花 (戸松彩花) 生理学研究所, システム脳科学研究領域, 特任准教授 (00415530)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 社会性 / 同期 / リズム / 運動 / マカクサル |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は実験環境の構築、動物の課題トレーニングおよび条件検討を行った。具体的には、サルが操作できるレバーの作成と、そのコントローラーの構築、眼球運動記録システムの構築、各種刺激提示システムの構築の上で、4頭のニホンザルに右上肢によるリズミカルな左右往復運動を訓練し、うち2頭においては速度コントロールの段階まで進んだ。残念ながらこのうちの1頭に自然発生の脳内感染が生じ、実験に供することができなくなった。 このため、速度コントロールのできるサル(1頭)および速度制限のない往復運動のみができるサル(2頭)に対して、(1)リズミカルな光の点滅(2)リズミカルな音刺激(3)リズミカルな光と音(4)リズミカルな往復運動を行うサルの動画を提示し、運動周波数に対する影響を検討した。 その結果、リズミカルな光や音は運動周波数に影響を与えないが、往復運動を行うサルの動画は影響を与えることがわかった。 当初の計画では、ヒトの実験と同様に、外的な刺激の周波数に運動周波数が近づく、いわゆる「引き込み」が見られると考えていたが、その逆に、動画の運動周波数が大きい時ほどサルは運動がうまく行えず、むしろ運動周波数が小さくなる傾向が見られた。 この結果は、リズミカルな運動を行うサルにとって、他者が行うリズミカルな運動を注視することは自己の運動制御の干渉になることを意味し、干渉の先に「引き込み」が生じる可能性を示唆するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、ヒトで頻回に見られる現象をマカクサルで再現した上でその神経基盤を明らかにしようとするもので、新しい試みであり、類似する先行研究が非常に少ない。そのため、検討すべき条件が多数あることは予め想定していた。 しかし、2018年度より約1年間をかけたトレーニングにより課題が完成したサルのうちの1頭を疾病により失ったことにより、2頭で同時に記録する実験環境を2019年度中に整えることが難しくなった。このため、動画による実験環境を整えることに注力し、データが取れ始めているところである。 その結果、サルが運動課題を行う際に、他のリズム刺激を得ることを避ける傾向があり、ヒトに見られる引き込みを再現する環境の構築に苦労している。しかしこれは新たな発見の糸口であり、研究の遅れというよりむしろ、検討項目が豊富にあることを示している。
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Strategy for Future Research Activity |
上記にのべた条件検討を受け、リズム運動の遂行に干渉が強い要素を抽出する。具体的には刺激の周波数、刺激のモダリティ、遂行する運動の周波数間の交互作用があると予想されるので、これらを検討できる実験系を構築し、データを取得する。 現在構築途中である実験系は以下の通りである。(1)6種類の動画内運動周波数(2)6種類の光点滅刺激(3)6種類の音刺激を、自己の運度周波数をコントロールできる動物1頭および定期的なレバー往復動作ができる動物2頭に提示し、行われる運動と視線を解析して結論を得る。また、意図的にリズム刺激を避けていることを示すためには、刺激選択課題を行い、運動中のみにリズム刺激を忌避する可能性を探る。前者の行動実験は現状に引き続き行うことができるが、後者の行動実験には若干の訓練が必要となる。これらをふまえ、訓練によって刺激忌避を回避するか、もしくは刺激忌避がある上で生じる現象に着目するかを決定する。これらの検討は全て、対面実験において引き込みが生じやすい環境を整えるものである。 続いて開頭手術を行い、運動関連領域および社会性関連領域における神経活動記録を開始する。
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Causes of Carryover |
日本神経科学学会のための出張費が他研究費より捻出できたため。 2020年度において、実験室構築のための消耗品代とする予定である。
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