2020 Fiscal Year Research-status Report
Efffect of amygdalar activity on recognition and neural representation of facial information
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19K07811
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Research Institution | National Institutes for Quantum and Radiological Science and Technology |
Principal Investigator |
宮川 尚久 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 脳機能イメージング研究部, 主任研究員 (60415312)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 霊長類 / 情動 / 視覚 / 情動反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、脳の代表的な情動処理中枢である扁桃体が、大脳皮質視覚野における視覚情報処理に及ぼす影響を評価するため、世界でも例の少ないマカクザルでの化学遺伝学を用いた神経介入を行っている。我々はまず、化学遺伝学に用いる新規人工薬剤デスクロロクロザピン(DCZ)の開発・評価を行い、これまでの薬剤と比較して非常に優れた脳内移行性を持つこと、また内在性受容体への非特異的結合が低い優れた薬剤であることを報告した(Nagai&Miyakawa et al., Nature Neuroscience 2020)。次に、この新規アゴニストDCZおよび興奮性化学遺伝学受容体hM3Dqを用いてマカクザル扁桃体の神経活動を賦活化させ、腹側視覚皮質に生じる視覚情報処理の変容について解析した。脳の腹側視覚皮質を広範囲で覆う表面脳波電極(ECoG)を留置し、サルが顔の画像を注視した際に反応する顔応答部位を特定した。強い情動を惹起する表情(恐怖、威嚇)を含む顔画像セットを提示しながら、化学遺伝学アゴニストDCZ投与により扁桃体神経活動の持続的賦活化を引き起こすことで、腹側視覚野の視覚応答性神経活動パターンにおいて、1)顔選択性領域内の顔画像に対する視覚応答が減弱すること、2)中立表情と脅威表情の画像に対する視覚応答の差が消失すること、3)色や形の視覚情報については扁桃体操作による影響が生じないことを見出した。また扁桃体操作が実験個体の主観的な情動に及ぼす影響を評価するため、代表的な自律神経応答である瞳孔径反応を調べた。操作をしない場合は、中立表情より脅威表情に対してより大きな散瞳を示したが、扁桃体を賦活化するとこの差は消失し、我々の扁桃体賦活化の実験においては、物体認知に関わる腹側視覚皮質と個体レベルの認知に対し、同様の影響を及ぼしていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究開始時点で、変異ムスカリン受容体型DREADDと新規アゴニストDCZの組み合わせで、1)霊長類の脳神経活動を変容させうること、2)前頭葉に用いることで、個体のワーキングメモリ課題遂行能力を変容させ得ること、を確認してあった。2019年度は、共同研究者らと協力し、in vitroやげっ歯類のデータを追加し、首尾よくNature Neuroscience誌に論文を掲載することが出来た。またサルの腹側視覚皮質を広範囲で覆う表面脳波電極(ECoG)を留置し、注視課題遂行中のサルに、強い情動を惹起する表情(恐怖顔、威嚇顔)を含む刺激画像セットを視覚提示し、視覚応答性神経活動パターンを計測した。上記の変異ムスカリン受容体型DREADDおよび新規DREADD薬剤DCZ投与により扁桃体神経活動の持続的賦活化を引き起こすと、腹側視覚野が、顔選択性領域において顔画像に対する視覚応答を減弱させること、中立表情顔と脅威表情の画像に対する視覚応答の差を消失させること、をECoGによる視覚応答性神経活動パターンより見出し、また2頭の動物で同じ傾向があることを確認した。2020年度は、これらのうち一頭の動物に色と形といった情動とは関係の無い視覚刺激セットを提示し、扁桃体操作による影響が腹側視覚皮質に生じないことを見出した。また、扁桃体操作が実験個体の主観的な情動に及ぼす影響を評価するため、瞳孔径反応を調べた。コントロール条件では、中立表情より脅威表情に対してより大きな散瞳を示したが、扁桃体を賦活化するとこの差は消失し、扁桃体の持続的な賦活化実験においては、個体レベルの認知と物体認知に関わる腹側視覚皮質の神経活動に、同様の影響を及ぼしていることが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、扁桃体操作による顔・表情特異的な影響が、腹側視覚皮質のどの領域に生じるのかをECoGのデータを用いたシングルチャネルデコーディングにより解析する。次に扁桃体から腹側視覚皮質への神経投射を抗体染色と解剖学的手法で精査し、ECoG記録領域と重ね合わせることで、扁桃体操作による影響が直接的な投射で起きているのか間接的な結合を含む経路で起きているのか検証する。また、腹側視覚皮質応答の早い成分と遅い成分それぞれで、扁桃体持続賦活の効果を確認する。早い短潜時の効果が確認できた場合、腹側視覚皮質をバイパスする皮質下の早い経路に由来した効果である可能性が示唆され、より遅い反応成分でのみ効果が確認出来れば、一旦腹側経路を通って扁桃体に到達した視覚情報が、フィードバック回路を介して腹側視覚皮質に戻っている可能性が示唆される。本研究内容は既に8割がた論文にまとめてあるが、上記の追加実験の結果も解析が済み次第まとめ、本年度前半のうちに投稿する。
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Causes of Carryover |
購入予定であった電気生理記録用電極ドライブの仕様変更(価格変更)を伴う購入不可期間があったため購入できず、またコロナ蔓延時期に当たったため、出張を伴う研究発表の機会が奪われ、助成金の未使用分が増えた。 電気生理記録用ドライブが購入可能となり、また2021年度秋以降に複数の国外学会における発表、また論文の投稿を予定している。次年度使用額はこれらに充てるものとする。
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Research Products
(8 results)
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[Journal Article] Chemogenetic dissection of the primate prefronto-subcortical pathways for working memory and decision-making2021
Author(s)
Kei Oyama, Yukiko Hori, Yuji Nagai, Naohisa Miyakawa, Koki Mimura, Toshiyuki Hirabayashi, Ken-ichi Inoue, Tetsuya Suhara, Masahiko Takada, Makoto Higuchi, Takafumi Minamimoto
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Journal Title
Science Advances (in press)
Volume: -
Pages: -
Peer Reviewed / Open Access
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[Presentation] 扁桃体が腹側視覚皮質における社会・情動性の視覚情報表現に果たす役割 ~化学遺伝学神経操作によるアプローチ2020
Author(s)
Naohisa Miyakawa, Yuji Nagai, Yukiko Hori, Takeshi Matsuo, Takafumi Suzuki, Ken-ichi Inoue, Toshiyuki Hirabayashi, Kei Oyama, Masahiko Takada, Tetsuya Suhara, Makoto Higuchi, Keisuke Kawasaki, Takafumi Minamimoto
Organizer
第43回日本神経科学大会
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[Presentation] Effects of different physical surface properties on face discrimination learning in macaque monkeys2020
Author(s)
Kazuko Hayashi, Narihisa Matsumoto, Keiji Matsuda, Kenichiro Miura, Shigeru Yamane, Shin Matsuo, Keiji Yanai, Mark A. G. Eldridge, Richard C. Saunders, Barry J. Richmond, Yuji Nagai, Naohisa Miyakawa, Takafumi Minamimoto, Masato Okada, Kenji Kawano, Yasuko Sugase-Miyamoto
Organizer
日本動物心理学会 第80回大会
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