2019 Fiscal Year Research-status Report
アトピー性皮膚炎の痒み過敏に関与する神経エピジェネティクスの解明
Project/Area Number |
19K07818
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
内田 仁司 新潟大学, 脳研究所, 助教 (30549621)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡田 峰陽 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, チームリーダー (50452272)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | アトピー性皮膚炎 / 痒み / 中枢性感作 / エピジェネティクス / 全脳イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
アトピー性皮膚炎には既存の治療薬が奏功し難いことから、新たな治療戦略の確立が強く望まれている。アトピー性皮膚炎の特徴である痒み過敏(些細な刺激で痒みが生じる現象)には、中枢神経の過敏化に起因する痒み伝達の増強(中枢性感作)の関与が示唆されているが、その実体と制御機構は不明である。そこで、本研究では、「ヒトの病態をよく反映するモデルマウス」と「組織透明化/全脳イメージング手法」を駆使して、アトピー性皮膚炎における痒み過敏に関与する脳神経細胞を同定するとともに、その細胞に生じる神経エピジェネティクス修飾の役割解明を目指す。研究初年度である当該年度では、研究実施計画の通りに、研究分担者である理化学研究所の岡田 峰陽チームリーダーからいただき、新潟大学脳研究所にて個体復元した「アトピー性皮膚炎を自然発症するマウス」の繁殖を開始した。また、レポーターマウスとの交配にも着手した。同時に、野生型マウスを用いて、痒み過敏を評価するための実験系を構築するために、各種起痒物質を用いた行動薬理学的解析を行った。さらに、痒み過敏に関与する神経細胞を同定するための予備的解析として、起痒物質投与後の脳を透明化し、三次元イメージングを実施した。また、活性化した脳神経細胞を標識化するためのアデノ随伴ウイルスベクターの構築も行った。その一方で、慢性の痒み病態モデルを作製し、その脳を透明化/三次元イメージング解析することにより、痒み病態に伴う脳内ミクログリア活性化変化を明らかにすることができた(論文投稿準備中)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、アトピー性皮膚炎の痒み過敏を生み出す神経機構を、特にエピジェネティクスの観点から明らかにすることである。研究初年度では、実施計画の通りに、自然発症性のアトピー性皮膚炎マウスを繁殖開始すると同時に、痒み過敏の評価系構築を行った。また、組織透明化/全脳イメージング手法を駆使して、「痒み刺激により活性化する脳神経細胞」と「慢性掻痒における脳内ミクログリア活性化」を評価し、その一部を現在論文投稿準備中であり、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降では、アトピー性皮膚炎を自然発症するマウスにおける痒み過敏を行動薬理学的に評価するとともに、痒み過敏に応答する脳神経細胞と脳内ミクログリアを組織透明化/全脳イメージング手法にて同定する。また、これらの細胞の機能操作と単離解析を通じて、エピジェネティクス異常とその役割解明を試みる。また、研究初年度では、本研究に関連することとして、研究分担者である岡田チームリーダーが、アトピー性皮膚炎を自然発症するマウスの解析を通じて、皮膚バリア減弱による感覚神経の異常活性化機構をScientific Reports誌に発表した(Takahashi et al., Scientific Reports, 2019, 9, 8625)。アトピー性皮膚炎では中枢機構と末梢機構の密接な相互作用が存在することが大いに想定されることから、本研究では、痒み過敏に関与する脳内機構と上記の末梢機構の相互作用についても評価する。
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Causes of Carryover |
アトピー性皮膚炎では、中枢機構と末梢機能の密接な相互作用が想定されることから、本研究では、アトピー性皮膚炎における痒み過敏に関与する中枢機構を研究代表者が明らかにし、それを基にして、研究分担者である岡田チームリーダーが末梢機構との相互作用を解析することを計画している。本研究の開始以前に、自然発症性アトピー性皮膚炎マウスの凍結胚が岡田チームリーダーより提供され、初年度では、そのマウスの繁殖並びにレポーターマウスとの交配を研究代表者が実施した。加えて研究代表者は、野生型マウスを用いた痒み過敏の評価系構築、痒み応答神経・ミクログリアの全脳イメージングなどを実施したが、自然発症性アトピー性皮膚炎マウスの痒み過敏とその中枢機構の解析については初年度には実施できなかった。よって、初年度では研究分担者の岡田チームリーダーの分担研究が実施されなかったために、研究分担者に配分した額(200,000円)が次年度使用額として生じた。自然発症性アトピー性皮膚炎マウスの解析は次年度以降に実施を計画しており、その研究結果をもとにして、次年度使用額は次年度請求助成金と合わせて、研究分担者の岡田チームリーダーが使用することを計画している。
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