2019 Fiscal Year Research-status Report
慢性虚血性疼痛における血管内皮増殖因子のスプライスバリアントの関与について
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19K07819
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
堀 紀代美 金沢大学, 医学系, 助教 (40595443)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
尾崎 紀之 金沢大学, 医学系, 教授 (40244371)
奥田 洋明 金沢大学, 医学系, 准教授 (40453162)
石川 達也 金沢大学, 医学系, 助教 (00750209)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 末梢動脈疾患 / PAD / 虚血性疼痛 / 血管内皮増殖因子 / VEGF165a / VEGF165b |
Outline of Annual Research Achievements |
【目的】末梢動脈疾患(PAD)で見られる虚血性疼痛のメカニズムを明らかにするため、本年度はPADモデルラットの虚血性疼痛における血管内皮増殖因子(VEGF)のスプライスバリアントVEGF165a およびVEGF165b、およびこれらの受容体VEGFRの関与について調べるために行動薬理学的解析を行う。 【方法】全身麻酔下でラットの総腸骨動脈および腸腰動脈を結紮することにより下肢の血流を阻害したPADモデルラットを作成し、ランダルセリット装置を用いて筋の機械的痛覚過敏を、トレッドミルを用いて間歇性跛行の有無を調べた。痛覚が亢進したPADモデルラットにVEGF165b の中和抗体、VEGF165a の合成を促進するプロテインキナーゼSRPK1 の働きを抑制するSRPK 阻害剤(SRPIN340)およびVEGF の受容体VEGFR1-2拮抗薬(PTK787)を投与して、疼痛行動の変化を行動薬理学的に調べた。 【結果】VEGFの受容体VEGFRの拮抗薬(PTK787)はPADモデルラットの間歇性跛行には効果がなかったが、筋の痛覚過敏を抑制した。SRPK 阻害剤(SRPIN340)の投与は筋の痛覚過敏を抑制した。まお、VEGF165b の中和抗体の投与では虚血下肢の低下した筋の痛覚閾値に変化を与えなかったが、興味深いことに、対照群のsham-ope群の正常な筋の痛覚閾値の低下が見られた。 【考察】本年度の成果により、PADラットの下肢の血流阻害による筋の痛覚過敏には、VEGFのスプライスバリアントVEGF165aおよびVEGF受容体VEGFR1を経たシグナル経路またはVEGF165a -VEGFR2経路のどちらか、もしくは両方の経路が関与すると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々が開発した慢性的な筋の痛覚過敏および間歇性跛行を呈するPADモデルラットを用いて、虚血性疼痛におけるVEGFのスプライスバリアントVEGF165a およびVEGF165b、およびこれらのリガントの受容体VEGFRの行動薬理学的検討について検討を終え、VEGF165a およびVEGFRについて新たな知見を得ることができた。 VEGF受容体拮抗薬のPTK787は臨床応用もされる安全で使い勝手の良い薬剤であるが、VEGFの3つの受容体VEGFR1、VEGFR2、VEGFR3のうち主にVEGFR2に強い拮抗作用を示す薬剤であることは明らかにされているが、VEGFR1にも若干の拮抗作用を示すことも報告されるため、本モデルの虚血性疼痛にVEGFR2のみ関与するのか、VEGFR1およびVEGFR2の両方が関与するのかを詳細に確かめるためにVEGFR1の中和抗体を用いた行動薬理学的解析も追加して現在行っている。 また、R2年度に重点的に行うことを計画していた虚血下肢のVEGFのスプライスバリアントVEGF165a およびVEGF165bのタンパク量の定量解析についてELISA法を用いてすでに着手を始めており、引き続き進める。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度はPAD モデルラットの痛覚の変化に関与する分子メカニズムを明らかにすることを目的に、虚血下肢のVEGFのスプライスバリアントVEGF165a およびVEGF165bのタンパク量の解析を行う。虚血下肢の圧痛を認めた腓腹筋についてELISA法を用いて定量する。VEGF165bには入手可能な特異的抗体があるため、ELISAにてタンパク量を定量可能であるが、VEGF165aには特異的な抗体がなく定量ができないため、VEGFとVEGF165bの定量を行い、VEGF165aはVEGF量とVEGF165b量の差から算出する。 また、令和2年度はPADモデルの知覚神経のVEGF受容体の発現についての解析を始める。痛覚が亢進したモデル動物の知覚神経の後根神経節(DRG)におけるVEGF受容体VEGFR2の発現の変化を免疫組織化学的に調べる。筋の痛覚におけるVEGFR2発現の関与を調べるためには、腓腹筋に逆行性トレーサーFluoro-goldを投与し、DRG内の筋の知覚神経を標識し、FGとVEGFR2の共陽性細胞を検索することで、筋の知覚神経について検討する。陽性細胞および共陽性細胞は細胞径ごとに分類し比較検討する。
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Causes of Carryover |
平成31/令和元年度に購入予定であった免疫組織染色用の抗原賦活化装置 「Decloaking Cham ber NxGen」は同じような性能の機器が本学の研究者が共同利用できる共通機器として整備されたのでそちらを利用する方針に変更し購入を見合わせた。そのため、繰り越し予算を生じたが、平成31/令和元年度に予定した実験が順調に進み、令和2年度で実施予定のELISA法によるタンパク定量について着手を始めたため、一部をキットや試薬の購入に充てた。このように繰り越した予算の一部を有用に用いたが、まだ次年度に繰り越す予算が生じた。この繰り越し予算は、予定してなかった実験であるVEGFR1中和抗体投与による行動薬理実験に関して、実験動物や抗体の購入に充てる。
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Research Products
(9 results)