2020 Fiscal Year Research-status Report
パーキンソン病原因遺伝子がα-synuclein凝集・伝搬に関わる分子機序の解明
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19K07830
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
井下 強 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教 (20601206)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | パーキンソン病 / 神経科学 / 小胞輸送 / LRRK2 / αシヌクレイン |
Outline of Annual Research Achievements |
パーキンソン病(PD)関連遺伝子の遺伝的相関解析から、LRRK2を軸とした複数のPD関連遺伝子との相関を明らかにしている。LRRK2単独欠失や病原性変異ショウジョウバエのシナプスにおいて、シナプス小胞輸送に関わる分子Arl8の蓄積が生じたが、Auxilinなどの欠失と組み合わせることにより、この表現型が増悪される。また、一部の相関がある遺伝子の過剰発現は、LRRK2欠失による表現型に対して改善効果を示した。シナプスにおけるArl8の蓄積部位を光-電子相関顕微鏡法(CLEM)により観察したところ、ドーパミンなどの神経伝達物質の放出を担う有芯小胞の蓄積が観察された。上記の結果から、有芯小胞の軸索輸送やシナプスへの分配の異常が考えられたため、軸索輸送に関わるモータータンパク質の欠失や過剰発現、軸索内微小管と小胞間の分離・再結合に関わるJNK経路関連分子の欠失や過剰発現によるArl8蓄積改善効果を解析した。その結果、細胞体からシナプスへの順行性輸送や微小管からの小胞分離を低下させることが、Arl8蓄積を抑制することが示唆された。以上の結果から、LRRK2は、Auxilinなどの複数のPD関連分子と協働し、有芯小胞の軸索輸送とシナプスへの分配を制御していると考えられる。LRRK2の病原性変異は、活性が亢進しているものが多いことから、LRRK2の変異により有芯小胞の軸索輸送やシナプスへの分配が過剰に亢進することで、神経機能の異常を招くと考えられる。そこで、成虫の行動を解析したところ、睡眠行動の異常が確認できた。睡眠行動制御には、ドーパミン神経も関わることから、LRRK2の変異に起因する有芯小胞の輸送・分配異常が神経機能異常につながることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、複数のPD関連遺伝子の遺伝的相関を解析し、LRRK2を軸とした相関を明らかにできている。Arl8の蓄積といった共通した表現型の異常を見出し、異常を改善できる分子を特定できており、これらは新たな治療標的分子の候補と考えられる。引き続き、行動レベルでの改善効果の解析を進める。また、PDの発症に重要なα-シヌクレインとArl8の共局在を確認できていることから、α-シヌクレインの動態異常が生じていることが推測できる。今後は、α-シヌクレインの動態の解析を進め、LRRK2を軸とした複数PD関連遺伝子の協働によるα-シヌクレインの動態制御機構の解明を試みる。
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Strategy for Future Research Activity |
LRRK2と複数のPD関連遺伝子、有芯小胞の軸索輸送・シナプスへの分配に関わる分子との遺伝的相関を示すことができ、異常表現型を改善する分子の候補が見つかっていることから、行動レベルでの解析を進め、神経機能改善が起きているかを解析する。また、α-シヌクレインの動態を解析し、有心小胞の動態異常との相関を明らかにする。ショウジョウバエでは、α-シヌクレインが発現していないが、ヒトのα-シヌクレインを発現させる遺伝子組換え系統は作製済みであり、組織染色が可能な抗体の選別を進めている。PDの特徴的病態であるレヴィ小体様のα-シヌクレインの凝集化には、シードとなるフィブリル化したα-シヌクレインが必要である可能性があるため、経口摂取や頭部への注入により、α-シヌクレインの凝集を促進させることも検討している。
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Causes of Carryover |
COVIC-19の影響で、参加予定だった学会への参加ができなかったため、旅費・宿泊費・参加費の使用が無かったため。
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