2019 Fiscal Year Research-status Report
RNAを標的とした新規ALS/FTLD治療法の検討
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19K07837
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
中川 直 東北大学, 医学系研究科, 助教 (30707013)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ALS / FTLD / モデルマウス / TDP-43凝集体 / RNase |
Outline of Annual Research Achievements |
TDP-43タンパク質の細胞質における凝集体形成が、筋萎縮性側索硬化症(ALS)および前頭側頭葉変性症(FTLD)発症の原因と考えられている。しかし、この凝集体の減少を目指した研究はなされていない。申請者は、培養細胞を用いたこれまでの研究から、TDP-43が自身に結合するRNAを介して凝集体を形成すること、およびTDP-43にRNaseを融合させたタンパク質(T-RNase)が既に形成されたTDP-43凝集体を減少させることを見出した。この研究成果をALSおよびFTLDに対する治療薬へ展開するため、本研究では、T-RNaseが生体内においてもTDP-43の凝集体を減少させ、ALS/FTLDモデルマウスの病的表現型を改善できるか検討することを目的としている。 1年目の研究では、神経細胞特異的にT-RNaseを発現させる遺伝子改変マウスを作製するため、Prpプロモーターの下流にT-RNase遺伝子をつないだターゲティングベクター(Prp-T-RNase)を作製した。 1年目の研究では、さらに、Prpプロモーターにより、神経細胞特異的にM337V変異型TDP-43(ALS/FTLD患者で同定された変異型)を過剰発現させた遺伝子改変マウスを、ALS/FTLDモデルマウスとして、Jackson laboratoryから購入予定であったが、マウス飼育施設の収容スペースの確保・整理に時間を要し、また、当該マウスはJackson laboratoryにおいて凍結保存されているため、移送までに4~5か月かかること、および、申請者の研究施設の異動が決まったため、現在保留中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
神経細胞特異的にT-RNaseを発現させる遺伝子改変マウスを作製するための、Prpプロモーターの下流にT-RNase遺伝子をつないだターゲティングベクター(Prp-T-RNase)は、計画通り、研究1年目に作製できた。当初の研究計画では、さらに、このターゲティングベクターによるT-RNaseの発現を、培養細胞で確認する予定であったが、ターゲティングベクターの作製に時間を要したため、至っていない。 また、当研究課題とは異なるプロジェクトに関わる、論文投稿に必要なマウス実験が、予想以上に入ってしまい、マウス飼育施設の収容スペースの確保・整理に時間を要したため、もう一つの研究1年目の課題であった、ALS/FTLDモデルマウスをJackson laboratoryから入手することができなかった。 以上の理由により、本研究は当初の計画よりやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
まず初めに、異動先において、関係する講習会を受講し、実験計画書が承認されたのち、すみやかに、マウスの受け入れ態勢を確立する。 その後、Prp-T-RNaseターゲティングベクターによるT-RNaseの発現を、培養細胞で確認する。発現が確認された場合、すみやかに、ターゲティングベクターをマウス受精卵に導入し、Prp-T-RNaseマウスを作製する。発現が確認されなかった場合は、プロモーター部分を変更し、ターゲティングベクターを再度作製する。T-RNaseの過剰発現は神経細胞にとって毒性がある可能性があるため、T-RNaseを高発現する個体だけでなく、低発現する個体もライン化する。 それと同時に、ALS/FTLDモデルマウスをJackson laboratoryから入手する。ヘテロ接合体マウスは顕著な表現型を示さないと報告されているため、系統の維持に使用する。ホモ接合体マウスは、ALS/FTLD患者と同様に、TDP-43凝集体と神経細胞死が、大脳皮質の神経細胞、および脊髄の運動神経に検出されると報告されているため、これを確認する。さらには、ホモ接合体マウスにおいて報告されている、生後3週目での運動機能障害と、生後4週間での早期致死の表現型を確認する。 これらを実行することにより、3年目の計画で予定している、Prp-T-RNaseマウスをALS/FTLDモデルマウスと掛け合わせ、ALS/FTLDモデルマウスの表現型(TDP-43凝集体形成、神経細胞死、運動機能障害、早期致死)が改善されるか検討する実験を遂行できるように準備する。
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Causes of Carryover |
マウス飼育施設の収容スペースの確保・整理に時間を要したこと、当該マウスはJacksonlaboratoryにおいて凍結保存されているため、移送までに4~5か月かかること、および、申請者の異動が決まったことから、1年目の研究で購入予定であったALS/FTLDモデルマウスを購入できなかったため、次年度使用が生じた。異動先において、関係する講習会を受講し、実験計画書が承認されたのち、すみやかに、マウスの受け入れ態勢を確立し、ALS/FTLDモデルマウスを購入する予定である。
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