2020 Fiscal Year Annual Research Report
老化に伴う脳内炎症反応遷延化の要因の同定および制御法の開発
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19K07840
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
田邊 勉 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (70183069)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 電位依存性Caチャネル / ミクログリア / 神経変性疾患 / パーキンソン病 / 神経炎症 / 老化 / Cav1.2チャネル / Cav2.2チャネル |
Outline of Annual Research Achievements |
細菌感染や、脳内に異物が蓄積したりすると、生体防御反応として自然免疫系が活性化し、まずM1系ミクログリアが活性化しこれら異物を貪食・消化・排除し、引き続きM2系のミクログリアが活性化し、様々なサイトカイン、ホルモン等を放出し、ダメージを受けた神経細胞等を修復する。しかし加齢に伴い、M1系及びM2系に特有の遺伝子の発現が両方ともに高まり、外からの刺激に過剰に反応するようになること(ミクログリアのプライミング化)、さらにはM1系からM2系へのミクログリアの変換がうまくいかなくなること(炎症反応の慢性化)が起こることが知られており、これが老化脳における炎症反応遷延化の基盤となっている。本研究の目的は老化脳における炎症反応遷延化のメカニズムを明らかにし、それを基盤とした抑制法を見出すことである。 【成果のポイント】 ミクログリア特異的にCav2.2の発現を抑制できるマウス(Cav2.2KDマウス)にMPTP(中脳黒質ドーパミン神経細胞を選択的に障害できる)を投与することにより、パーキンソン病モデルを作製した。その結果、MPTP投与後に残存するドーパミン神経細胞数は対照の野生型マウスに比べてCav2.2KDマウスの方がやや多い傾向が見られた。また、同処理によって黒質付近へのミクログリアの集積が起こるが、Cav2.2KDマウスではその集積が有意に減少していた。さらに、行動学的実験の結果、MPTP投与後の自発行動の減少、協調運動機能の障害がCav2.2KDマウスで有意に改善されていた。興味深いことに、これらの結果は同じく電位依存性カルシムチャネルであるCav1.2をミクログリア特異的に抑制した時とは全く反対の結果となった。本研究結果はCav2.2及びCav1.2が全く異なった方向性を誘導するスイッチであり、ミクログリアのCav2.2の阻害はパーキンソン病治療に有用である可能性を示唆する。
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Research Products
(1 results)