2020 Fiscal Year Research-status Report
プリオン病における病態解明および自然免疫賦活化療法の開発
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19K07844
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
石橋 大輔 福岡大学, 薬学部, 教授 (10432973)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | プリオン / インターフェロン |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトのクロイツフェルトヤコブ病に代表されるプリオン病は、ウシの牛海綿状脳症 (狂牛病:BSE)を含む各種動物に見られる空砲変性及びグリオーシスなどの脳内病理変化を伴う難治性の中枢神経変性疾患である。病原体(プリオン)は、感染症の原因となるウイルス・細菌等の病原体とは異なり、感染時に宿主の防御機構である免疫応答が惹起されないとされている。本研究では、I型インターフェロン活性化システムに注目し、病原体プリオンの感染病態を解明することを目的としている。これまでの研究でI型インターフェロンを誘導する転写因子IRF3の遺伝子欠損マウスにおいて、複数のマウスプリオン株(22LおよびmBSE)の感染に対し、野生型マウスに比べ早期にプリオン病を発症した。つまり、プリオンの株間に差異は無く、易感染性を示したことより、IRF3を介したI型インターフェロンがプリオン感染に対し防御的に働くことを示した。本年度は、I型インターフェロン受容体遺伝子欠損マウスにマウスBSE株を感染させた際の病態発現について検討した。10%脳乳剤の脳内投与後、型インターフェロン受容体遺伝子欠損マウスは野生型マウスに比べ、生存期間が短縮したが有意差は見られなかった。これまでの研究で22Lプリオンでは、有意な生存期間の短縮が認められていたことより、I型インターフェロンによる宿主防御機構には、プリオン株の特異性があることが示唆された。現在は、I型インターフェロンの下流に位置する遺伝子群のプリオン病に対する影響について検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では、プリオン病病態モデル動物を用いた実験が必要であり、プリオンを感染後、病態を発症し、死亡するまで半年~1年程度かかる。そのため、実験結果の評価までには多くの時間を要するが、培養細胞を用いた実験などの生化学的検討や分子生物学的検討の実験は順調に遂行している。総合的には、概ね順調と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
インターフェロンの下流の遺伝子(interferon-stimulated genes: ISGs)におけるプリオン感染に対する影響を評価するため、異常プリオンタンパクを発現した培養細胞を用いた検討を主体にし、様々なISGs遺伝子発現させた際の影響について生化学的、分子生物学的手法を用いた解析を行う。また、動物実験でもISGsの影響について検討する。
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Causes of Carryover |
プリオンの感染実験には結果を得るのに数ヶ月要するため、次年度まで実験を継続して行う必要がある。今後も分子生物学的実験など実験計画に沿って遂行していく予定である。
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Research Products
(11 results)