2019 Fiscal Year Research-status Report
TDP-43の核移行を制御する一次構造変化と翻訳後修飾の探索
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19K07848
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
佐藤 俊哉 北里大学, 医学部, 教授 (90359703)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小寺 義男 北里大学, 理学部, 教授 (60265733)
板倉 誠 北里大学, 医学部, 准教授 (30398581)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | TDP-43 / 翻訳後修飾 / 質量分析 / 筋萎縮性側索硬化症 / 疾患モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
TDP-43細胞内局在スイッチを個体レベルで同定するため、申請時の検討項目として(a)~(d)の4項目を挙げたが、今年度は以下の2項目について進展があった。 (a)TDP-43の翻訳後修飾の探索 野生型マウス大脳の細胞質および核分画を、10%ポリアクリルアミドゲルを用いて分離し、トリプシンを用いたゲル内消化と質量分析にてペプチド断片を同定したところ、TDP-43のカバー率は41%と低かった。TDP-43特異抗体による免疫沈降法を用いてもカバー率は42%に止まり、両者を合わせても44%であった。TDP-43部分欠損マウスの結果から、細胞内局在スイッチは262-348アミノ酸残基(aa)内に存在すると推定しているが、同部位に相当する同定ペプチド断片は、276-293 aa(FGGNPGGFGNQGGFGNSR)のみで、推定領域の21%であった。 (c)CRISPR/Cas9を用いた新たなTDP-43改変マウスの作成 TDP-43 C末領域は構造的に4分割され(GaroS1、Hydrophobic、Q/N、GaroS2)、各領域の生理的機能を明確にするため、CRISPR/Cas9を用いて新たなマウスの作成を行った。最初にGaroS2領域(367-414 aa)の欠損を作るため、374番目のチロシン(Y374)を標的としたgRNAを用いた。現在までに4系統を分離し、GaroS2領域のほぼ全領域(368-414 aa)を欠損するY09d29系統マウスを確立した。詳細は現在解析中であるが、Y09d29系統ではホモマウスが生存することから、GaroS2領域がTDP-43の生理的機能に必須ではないことが分かった。GaroS2領域は、病的なリン酸化が生じる場所としても知られていることから、GaroS2領域の存在意義について、さらなる検討が必要であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
TDP-43の濃縮を目指してゲル内消化を行ったが、TDP-43のカバー率の向上には結びつかなかった。また現在までに同定された翻訳後修飾は、脱アミドと酸化が中心で、蛋白老化という観点からは興味を持っているが、生理的機能に直結する細胞内局在スイッチの候補とは考えにくかった。細胞内局在スイッチという観点からは、可逆的な制御を受けるリン酸化やアセチル化などが重要と考えられるが、これらの翻訳後修飾は同定されなかった。この結果から、申請時の検討項目に加えて、(e)TDP-43濃縮法の開発、(f)既知の翻訳後修飾から候補を絞って検討、という2つの方法の追加を考えることとした。
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Strategy for Future Research Activity |
(e)TDP-43濃縮法の開発 TDP-43などの天然変性タンパク質を特異的に沈殿させる方法として、Biotinylated isoxazole(b-isox)分画法が開発されているため(Kato et al. Cell 2012 6 149: 753)、本法を用いたTDP-43濃縮を試みる。 (f)既知の翻訳後修飾から候補を絞って検討 我々が同定した翻訳後修飾(脱アミド、酸化)は、長谷川らのグループが異常蓄積したTDP-43で確認した翻訳後修飾と一致する(Kametani et al. Sci Rep 2016 6: 23281)。我々の研究は、生理的なTDP-43を対象とするため、タンパク質量が少なく、さらにイオン化効率の悪いリン酸化ペプチドの同定は、圧倒的に不利である。そこで既知のリン酸化サイトに絞り込むとともに、近年開発されたChemical dephosphorylation法を用い、イオン化効率の改善を試みる。
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Causes of Carryover |
助成額の95%以上を支出したが、共同研究者との調整を行うために55,055円ほどの残額が生じた。残額が少ないため、翌年度分と合わせて消耗品として計上する。
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Research Products
(1 results)