2020 Fiscal Year Research-status Report
内臓痛の伝達に関与する脊髄内神経回路とその構築を制御する分子基盤の解明
Project/Area Number |
19K07855
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Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
西田 和彦 関西医科大学, 医学部, 助教 (80448026)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
寿野 良二 関西医科大学, 医学部, 講師 (60447521)
片野 泰代 関西医科大学, 医学部, 准教授 (60469244)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 内臓痛 / 脊髄後角 |
Outline of Annual Research Achievements |
内臓痛は体性痛と同様に我々に身近な疼痛であるにもかかわらず、その伝達に関与する脊髄内神経回路の実体は不明な点が多い。本研究では脊髄後角に存在する多様な神経細胞のうち、内臓痛がどのような神経細胞集団を介して伝達されるのかの理解を目指すものである。 デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)飲水投与による潰瘍性大腸炎モデルマウスを内臓痛モデル、ホルマリンを皮膚内注入したマウスを体性痛モデルとしてそれぞれ用い、これらマウスの脊髄での神経活動を抗c-fos抗体による免疫染色により解析し、さらに両者の神経活動パターンを比較検討した。 内臓痛モデルでのc-fos陽性ニューロンがどのような神経細胞集団であるかを、脊髄後角の各種マーカー分子(SST, Pax2, Pdyn, POU4f1)との共染色により調べた結果、c-fos陽性ニューロン中のPax2, Pdyn, POU4f1の陽性率は30-40%と高かった。次にこれらの陽性率を体性痛モデルのc-fos陽性ニューロン中の陽性率と比較したところ、内臓痛モデルにおけるPOU4f1の陽性率は体性痛モデルのそれに比べて顕著に高かった。以上の結果より、POU4f1陽性ニューロンは内臓痛伝達に大きな貢献をしている可能性が示唆された。 以上の結果を踏まえて、内臓痛伝達におけるPOU4f1陽性ニューロンの役割を解明すべく、POU4f1ニューロンの機能阻害系の確立の準備をしている。POU4f1-Creマウスを入手し、さらにアデノ随伴ウイルス発現系、Cre-loxPシステムを用いて、抑制性DREADD、ジフテリア毒素受容体をPOU4f1陽性ニューロン特異的に発現させる系の構築を目指す予備実験を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
デキストラン硫酸ナトリウムの飲水投与による内臓痛モデルが確立し、さらに体性痛モデルマウスとの比較により、内臓痛伝達に関与する脊髄後角ニューロンのサブタイプが同定できた。さらにそのニューロンのサブタイプの神経活動を調節するための遺伝子改変マウスも入手でき、機能解析に向けた実験系構築の目途も立っている。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度の成果より、内臓痛の脊髄内伝達にはPOU4f1陽性ニューロンが大きく貢献をしているものと予想される。そこで、POU4f1陽性ニューロンの内臓痛伝達における役割を調べることを目的としてその神経機能を阻害した際の内臓痛への応答の変化を調べる予定である。 第一に、POU4f1陽性ニューロンに特異的に抑制性DREADD,ジフテリア毒素を導入する系を確立する。POU4f1-Creマウスの脊髄に抑制性DREADD、ジフテリア毒素受容体を発現するアデノ随伴ウイルスをインジェクションする系を構築する。 第二に、上記の系を用いて内臓痛モデルマウスの脊髄後角のPOU4f1陽性ニューロンの神経活動を阻害した条件で内臓痛で認められる行動がどのように変化するのかを調べる。 第三に、内臓痛への応答を客観的に評価する系を構築する。現在用いている内臓痛モデルでは、お腹をなめるなどの行動が認められるがそのほかの行動を深層学習を用いた系により調べる。フリーソフトのdeeplabcutを用いてマウスの表情を解析することにより、内臓痛誘導時、平常時のマウスの表情の特徴をソフトにより学習させる。将来的には、POU4f1ニューロンの神経活動を阻害した内臓痛モデルマウスでの内臓痛応答の変化をこの系を利用して調べる計画である。
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Causes of Carryover |
内臓痛伝達における脊髄後角ニューロンの機能解析にやや遅れが生じ、当初計画していたアデノ随伴ウイルスの購入、ジフテリア毒素の購入が当該年度内にはできなかった。これらの購入は次年度使用額により行う予定である。
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