2020 Fiscal Year Research-status Report
プリオン様伝播モデルによるレビー小体型認知症病原蛋白質の本体解明と創薬基盤の構築
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19K07858
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
佐野 和憲 福岡大学, 薬学部, 准教授 (50534343)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | レビー小体型認知症 / α-シヌクレイン / プリオン様伝播 / リン酸化 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に、ある酵素Xがα-シヌクレイン(αSyn)の129番セリン(Ser129)だけでなくアミノ酸Yに対してもリン酸化反応を示し、そのリン酸化がレビー小体型認知症(DLB)における異常型αSynへの構造変換に関与する因子であることを新たに見出した。 本年度ではまずDLB由来脳におけるアミノ酸Yリン酸化について免疫組織化学染色法解析を行った。アミノ酸Yリン酸化は、レビー小体内で顕著に観察され、アミノ酸Yリン酸化はSer129リン酸化と同様、凝集αSynにおいて認められることが示された。 アミノ酸Yが酵素Xによって直接的にリン酸化される旨の報告はこれまでに無いため、リコンビナントαSyn(r-αSyn)を用いて酵素Xのアミノ酸Yリン酸化機序を解析した。野生型r-αSyn (WT-r-αSyn)に酵素X 及びATPを混和しインキュベートした反応液では、ウェスタンブロット法により、DLB脳と同様、>250kDaにSer129リン酸化の凝集αSynが認められた。一方、WT-r-αSynのSer129をアラニンで置換した変異体(S129A-r-αSyn)について同様の実験を行った場合では凝集体、Ser129リン酸化は認められなかった。さらに反応後のWT-r-αSynではアミノ酸Yリン酸化が示されたが、S129A-r-αSynではそのリン酸化は示されなかった。次にアミノ酸Yをアラニンで置換した変異体(Yアミノ酸A-r-αSyn)について同様の実験を行った場合、WT-r-αSynと比較して、Yアミノ酸A-r-αSynの有意な凝集及びSer129リン酸化の形成促進が示された。これらの結果は、酵素XはSer129リン酸化を介して間接的にアミノ酸Yをリン酸化し、アミノ酸Yリン酸化はαSynのSer129リン酸化及び凝集形成に対して抑制的に働くことを示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
異常型αSynのプリオン様伝播性に関わる新たな候補因子としてアミノ酸Yリン酸化を見出すことができ、実際にDLBにおいてアミノ酸Yリン酸化のSer129リン酸化及び凝集形成に対する抑制機構を明らかにしている。 さらに現在、Real-time Quaking-Induced Conversion(RT-QuIC)ハイスループット解析においてプリオン様伝播性を示した異常型r-αSynの細胞における伝播性評価及び本体解明のための構造学的解析も順調に取り組むことが出来ている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、異常型r-αSynのプリオン様伝播性の解析を行い、伝播性を有する異常型r-αSyn本体解明のための構造学的解析を行う。また、r-αSynを用いた試験管内実験で明らかとなった酵素Xのアミノ酸Yリン酸化機序が細胞でも見られるのかについて解析し、異常型αSynのプリオン様伝播における酵素X及びアミノ酸Yリン酸化の機能的役割を明らかにする。さらに、酵素X、アミノ酸Yリン酸化に関連する薬剤・抗体を中心に、DLB治療薬の探索及び創薬基盤の構築に取り組む。
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