2019 Fiscal Year Research-status Report
Significance of manipulative treatment of acupuncture as stimulation method: Its scientific relevance to therapeutic effect.
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19K07867
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
大田 美香 神戸大学, 医学研究科, 医学研究員 (20274706)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高岡 裕 神戸大学, 医学部附属病院, 准教授 (20332281)
鈴木 高史 神戸常盤大学, 保健科学部, 教授 (70305530)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 鍼治療 / 手技 / 鍼刺激 / ミオスタチン / クレアチンキナーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
鍼治療方法のうち鍼刺激の技術は手技と呼ばれ、切皮(せっぴ)、単刺(たんし)、旋捻(せんねん)等の方法がある。また装置を用いた刺激として、鍼通電、レーザー(低出力レーザー・連続波)、我々が開発したフェムト秒レーザー(超短パルスレーザー)という方法も存在する。これまでに、我々はこれらの方法で刺激した組織の形態が類似であるにも関わらず、手技によって骨格筋でのミオスタチン遺伝子発現への影響が逆になるという、非常に興味深い現象を見出した。このことは、鍼刺激の結果生じた形態学的変化が類似していても、刺激に対する生体の反応が異なることを意味する。このことから、我々は多種類の鍼刺激方法が多様な生体の反応を惹起し、その結果として鍼治療の対象となる症状の範囲を広げているとの仮説を着想した。そこで本研究では、鍼治療における刺激方法と生体の反応との関係を、科学的に明らかにすることが目標である。 本年度は、鍼刺激方法による効果の評価法を確立した。その評価法は、血清クレアチンキナーゼの測定、ミオスタチンの遺伝子発現の解析、骨格筋の組織解析、である。評価法の確立が完了したので、本年度予定の切皮刺激とフェムト秒レーザー鍼刺激の効果について解析を実施した。まず、骨格筋の損傷の指標となる血清クレアチンキナーゼを測定した。その結果、切皮刺激とフェムト秒レーザー鍼刺激の両方はコントロールマウスと同レベルであり、骨格筋の損傷を生じないことが明らかになった。次に、ミオスタチン遺伝子の発現抑制は骨格筋幹細胞の増殖誘導との関連があることから、刺激部位の骨格筋のオスタチン遺伝子発現を解析した。切皮刺激のミオスタチン遺伝子発現はコントロールと同様であったが、フェムト秒レーザー鍼刺激では有意に低下した。今後、さらに解析を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、鍼刺激方法による生体反応の評価法として、血清クレアチンキナーゼ測定、ミオスタチ遺伝子の発現解析、骨格筋の組織解析、を確立し、その後に前倒して2種類の手技の生体反応を解析した。 実験動物への鍼刺激方法は以下の通りである。まずマウスの個体のばらつきを減らすために、近交系のC57BL/6J系雄性マウス8週齢を使用した。麻酔下マウスの下腿部を脱毛し、刺激を行った。その際、切皮刺激ではステンレス鍼(0.16 mm径)を用い鍼の刺入を皮膚に限局し、その操作を30回行った。また、フェムト秒レーザー刺激では、300μJ/pulseのフェムト秒レーザーをマウス下腿部に0.5 mm間隔で合計625箇所に照射した。各刺激の5時間後に、採血と刺激部位の下腿三頭筋の摘出を行い、以後の解析に供した。同様に、無刺激の麻酔マウスをコントロール群として解析試料を調整した。以上の、動物実験では、茨城大学農学部の豊田淳教授の協力を得た。次に、血液から血清を分離しJSCC Transferable Methodを用いて血清クレアチンキナーゼ測定した。引き続き、下腿三頭筋から全RNAを抽出しcDNA合成し、ミオスタチ遺伝子発現のリアルタイムPCR解析を行った。リアルタイムPCR解析にはTaqMan Gene Expression Assay (Thermo Fisher Scientific社)を使用し、その発現量は内在性コントロールであるGAPDH遺伝子の発現量を用いて補正して決定した。 その結果、血清クレアチンキナーゼ活性は切皮刺激とフェムト秒レーザー鍼刺激のいずれもコントロールマウスと同様であり、骨格筋の損傷が少ないことが示唆された。ミオスタチン遺伝子発現は、切皮刺激とコントロールで同程度だったが、フェムト秒レーザー鍼刺激では有意に低下していた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、本年度の解析を引き続き行うと共に、旋捻刺激、単刺刺激、鍼通電刺激等の解析し、鍼刺激方法と生体の刺激に対する反応を解明する。 (1) 旋捻、単刺、鍼通電の各刺激方法:旋捻刺激では、麻酔下のマウスの下腿部を脱毛し、ステンレス鍼を刺入した状態で、鍼を左側へ10回旋回、右側へ10回旋回する。単刺刺激では、脱毛したマウス下腿部にステンレス鍼を骨格筋まで刺入し、抜く操作を合計30箇所に行う。鍼通電刺激は既報(Physiol Genomics 30, 102-110, 2007)に従い、麻酔下のマウス下腿三頭筋に2本のステンレス鍼を刺入し、針電極低周波治療器で鍼通電刺激を行う。 (2)解析方法:1年目と同様に、血清クレアチンキナーゼの測定、ミオスタチ遺伝子の発現解析、骨格筋の組織解析の解析系を用いて評価する。
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Causes of Carryover |
次年度も、本年度に引き継ぎ解析を行い、旋捻刺激、単刺刺激、鍼通電刺激等の鍼刺激の効果を解析する予定である。研究用試薬や実験器具、研究成果の発表・関連研究の情報収集のための旅費や論文投稿費用、別刷り料等で研究費を使用する予定である。さらに、確実に成果を得るために、実験補助者を雇用し、解析を進める。以上の研究計画を遂行するため、研究費を使用する。
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