2019 Fiscal Year Research-status Report
Suggestion of therapeutic strategies of sarcopenia by unraveling mechanism through anti-inflammatory actions of androgen
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19K07931
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
孫 輔卿 東京大学, 医学部附属病院, 特任助教 (20625256)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
矢可部 満隆 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (10747265)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | アンドロゲン / サルコペニア / 血管炎症 / 筋代謝 / 慢性炎症 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は加齢に伴うアンドロゲンの低下が引き起こすサルコペニアの発症機序を筋タンパク代謝への直接的な影響とは異なる内分泌ホルモンとして全身を介する影響を明らかにすることを目的とする。特にアンドロゲンの抗炎症作用に着目し、アンドロゲン低下による全身の慢性炎症の惹起と骨格筋選択的な炎症誘導因子や特定の炎症性細胞による筋炎症の機序を解明することを目的とする。今年度は我々が確立したアンドロゲン低下が血管炎症を発端に全身の炎症を惹起するマウスモデルを用いて、骨格筋への影響(筋炎症・老化や機能低下)を検討した。具体的には野生型マウスにおいて、精巣摘出後に血管炎症を塩化カルシウムの刺激とアンジオテンシンⅡの持続投与により誘導した。精巣摘出+血管炎症誘導後、下肢骨格筋(ヒラメ筋、腓腹筋)を回収して、筋重量を測定したところ、精巣摘出のみの群に比べて、ヒラメ筋、腓腹筋ともに有意な重量の低下が認められた。骨密度においても、精巣摘出+血管炎症誘導マウス群において、低下の傾向を示した。これらの結果からアンドロゲン低下が全身の慢性炎症を介して骨格筋へ影響を与える作用が示唆された。この精巣摘出+血管炎症誘導群での有意な筋重量の低下を説明する作用機序を明らかにするために、筋合成系因子(myogenin、PGC1a、CyclinD1など)、分解系因子(Myostatin、MuRF-1、Atrogin1など)、炎症関連因子(TNFa、MCP-1、iNOS、IL-6、IL-1bなど)の発現変化をヒラメ筋および腓腹筋で検討したが、精巣摘出+血管炎症誘導群での有意な変化は認められなかった。今後は精巣摘出+血管炎症誘導による全身炎症を経時的に追いながら、筋代謝への影響や骨炎症および脂肪化などに対する影響も検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究はアンドロゲンの低下が血管炎症を誘導し、全身の炎症惹起に寄与するマウスモデル(精巣摘出+血管炎症誘導モデル)を用いて、アンドロゲン低下が全身の炎症惹起・波及を介して骨格筋に及ぼす影響を検討、さらに血中の炎症誘導中核因子や主体となる炎症性細胞を同定、また制御することで、アンドロゲンの抗炎症作用に基づくサルコペニア改善機序を明らかにすることを目的とする。そのなか、今年度は精巣摘出+血管炎症誘導のマウスにおいて、ヒラメ筋および腓腹筋の重量が精巣摘出のみの群に比べて、有意に低下する結果が得ることができた。この結果から我々が確立したモデルはアンドロゲンの低下が全身性炎症惹起を介して骨格筋へ及ぼす影響を検討できる有用なモデルであることを示した。したがって今後、このモデルで詳細な機序解明を追求することができる。具体的には骨格筋の組織学的(筋線維数や断面積、筋繊維タイプの構成比)、形態的(脂肪化、線維化)、筋機能(筋力:grip-strengthテスト、運動機能:ロタロッドテスト)、分子生物学的(筋代謝関連因子、アポ トーシス、老化関連因子)変化を評価する予定である。また骨格筋内の炎症については骨格筋での内在性および外因性炎症性細胞(マクロファージ、好中球、リンパ球な ど)の局所や形質を病理組織学的に検討する。また、IL-6、TNFaなどの炎症性サイトカインおよびpSTAT3、NFkBなどの炎症シグナル経路の活性についても検討し、アンドロゲン低下による筋代謝に対する直接的な影響および全身の炎症惹起を介した影響を明らかにすることを目指す。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、昨年度に得られた精巣摘出+血管炎症誘導群での有意な下肢筋重量の低下という結果の詳細な機序を追求する。具体的には骨格筋の形態的な変化を筋線維数や断面積、筋繊維タイプの構成比などで精巣摘出のみの対照群と比較検討する。筋代謝制御因子や骨格筋の機能に対する検討も行う。さらに、全身炎症を介した骨格筋への炎症波及・拡大を想定して筋内炎症性細胞の浸潤を病理組織学的に検討する。また、筋内の炎症性サイトカインおよびケモカイン、炎症シグナル経路の活性についても検討を行う。すべて精巣摘出のみのマウスの骨格筋と比較評価することでアンドロゲン低下による筋代謝に対する直接的な影響と全身の炎症惹起を介した影響を明らかにする。次に、アンドロゲン低下による全身の炎症惹起を介した作用を明らかにするために、精巣摘出+血管炎症誘導マウスの血中炎症誘導因子をcytokine array、proteome profilerなどを用いて網羅的に探索し、アンドロゲン低下に応答する血中炎症因子を同定する。さらに同定した因子のなか、骨格筋内の上昇した炎症性サイトカインやケモカイン、活性化された炎症シグナル経路と連動する因子に絞り、骨格筋特異的に炎症を誘導する血中因子を特定する。最終的にはその特定因子の制御によるサルコペニア抑制が可能であるかを細胞レベルおよび個体レベルで検証する予定である。
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Research Products
(9 results)