2019 Fiscal Year Research-status Report
非アルコール性脂肪肝炎への進展に関わる腸管粘膜表層細菌の解析
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19K07938
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
酒井 新 神戸大学, 医学部附属病院, 医員 (50792636)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 潤 神戸大学, 医学部附属病院, 特定助教 (50631561)
矢野 嘉彦 神戸大学, 医学研究科, 講師 (60419489)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 非アルコール性脂肪肝炎 / 腸内細菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は脂肪肝を背景とする肝炎である。さらにBMI正常であるにもかかわらず、膵切除後や消化管術後など腸内細菌変化が起こる患者でNASHを発症する患者が存在する。NASHは、健常人と比べ糞便中の腸内細菌叢構成の違いが指摘されているが、腸管粘膜上皮により近い上皮表面のムチン層内の細菌叢の違いとその病態への影響については不明な点が多い。当研究の目的は患者の腸管粘膜上皮表面の細菌叢に疾患特有性や病勢との関連があるかを明らかにすることである。 これまでの研究で、下部消化管内視鏡による粘膜上皮表面のムチン層に存在する細菌叢の採取方法およびDNA抽出方法、シーケンスライブラリー作成方法などの条件検討を行い、次世代シーケンサーによってNASH患者と非NASH患者2名づつにおける粘膜表層細菌叢の解析を行った。サンプル重量当たりの細菌含有量は糞便中よりも粘膜表層の粘液中の方が多いことを明らかとした。また、NASH患者において、糞便中ではPrevotella属やBacteroides属が減少する一方、Escherichia族が増加する傾向を認めた。さらに、粘膜表層の細菌叢構成においてもPrevotella属の減少およびEscherichia属が増加する傾向が見られた。NASH患者および健常者ともに、同一個人でも粘液中の細菌叢構成は糞便中のものと大きく違う一方で、健常人とNASH患者ともに同一個人内では粘膜表層の細菌は回腸末端や大腸の各場所の部位によらず似通っていることを明らかとした。 現在症例を集積中で、膵疾患患者含め今後さらにサンプルの集積を進め解析を行う。NASH患者と健常者の比較、さらにはNASH患者の中で病勢ごとに腸管粘膜上皮表面の細菌叢を解析することで、NASHの病態に関わりうる粘膜表層の細菌叢を統計学的に明らかにし解析していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究で、下部消化管内視鏡による粘膜上皮表面のムチン層に存在する細菌叢の採取方法の条件検討を行い、粘膜上皮表層のムチン層内の細菌叢構成の次世代シーケンサーによる標準的解析方法を確立した。さらに特定の菌種がNASH患者で増加していることや、さらに健常人とNASH患者ともに粘膜表層の細菌は回腸末端や大腸の各場所の部位によらず差が少ないことを明らかとしている。今後さらにサンプル数の集積を進め、腸管粘膜上皮表面の細菌叢と疾患の相関解析を継続していくための土台が完成したと考えるため、本研究が順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後さらにサンプル数の集積を進め、NASH患者と健常者、さらにはNASH患者の中で病勢と腸管粘膜上皮表面の細菌叢との相関を明らかにする。
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Causes of Carryover |
解析によっては、今年度と次年度で施行する順序が変更になり、それに伴い物品費やその他検査費用などが変化し次年度使用額として生じた。次年度使用額として持ち越された研究費を予定通りの解析に使用する。
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