2020 Fiscal Year Research-status Report
炎症性筋疾患における免疫チェックポイント分子とマクロファージの役割に関する検討
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19K07956
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Research Institution | Tokyo University of Technology |
Principal Investigator |
清水 潤 東京工科大学, 医療保健学部, 教授 (40260492)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久保田 暁 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (30771589)
石浦 浩之 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (40632849)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 筋炎 / 免疫チェックポイント / irAE / 重症筋無力症 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、免疫チェックポイント阻害薬による免疫関連有害事象としての筋炎(irAE筋炎)と慢性移植片対宿主病(GvHD)に伴う筋炎の臨床病理像の検討を行った。irAE筋炎は、14例(男11、女3、生検時の血清CK値は2259IU/L)。14例中の2例で先行病態として封入体筋炎、SLEが存在し、2例で抗Jo-1抗体、抗TIF1γ抗体が血清中に存在した(他の筋炎素因合併)。irAE筋炎単独群10例中8例で局所巣状壊死貪食像を認め3例で肉芽腫様変化を認めた。CD8陽性リンパ球の浸潤は巣状壊死貪食像の近傍にとどまり組織適合抗原(MHC-classⅡ)の非壊死筋線維上の発現も局所であった。また、CD8陽性(PD-1陽性)細胞傷害性T細胞とCD11c陽性M1マクロファージの非壊死筋線維へのアタック像を高頻度で認めた。一方、4例のirAE+他の筋炎素因合併例では、局所巣状壊死貪食像を1例(1/4)で認めたが、高度のリンパ球の集簇像を2例で認めるほか、合併筋炎素因に特徴的な病理像(封入体筋炎、抗Jo1抗体陽性、抗TIF1γ抗体陽性)を認めた。irAE筋炎は他の筋炎素因が存在する場合、臨床病理像が修飾されることが明らかになった。慢性GvHDに伴う筋炎を16例で検討した(男10、女6)。亜急性に増悪しCK値が1000IU/L以上が5例(平均4441IU/L)、CK値が1000IU/L以下11例(平均119IU/L、15-304IU/L)の2群に特徴付けられた。CK高値群の3例でCD8陽性(PD-1陽性)細胞傷害性T細胞とCD11c陽性Mマクロファージの非壊死筋線維へのアタック像を認めたが、CK低値群では1例であった。また、CK低値群では炎症像が乏しく組織内に鉄沈着を認める例が3例存在した。慢性GvHDに伴う筋炎の臨床病理像は均一ではないことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1)irAE筋炎と慢性移植片対宿主病(GvHD)に伴う筋炎の臨床病理像の検討はほぼ終了した。irAEとしての筋炎では、その他の筋炎素因、合併する筋炎自己抗体により臨床病理像が変化することが明らかになった。慢性GvHDに伴う筋炎の臨床病理像は均一でないことがわかった。免疫チェックポイントの関係した筋炎としては、CK高値の亜急性増悪期の筋炎像に焦点をあてる必要がある。免疫チェックポイントに異常がある筋炎である両群に関して知見の意義をまとめていく。 2)免疫チェックポイント機構に異常がある筋炎の筋炎全体群の中での評価検討に、やや遅れが生じている。筋炎特異抗体(TIF1γ、Jo1抗体など)ごとに免疫チェックポイント関連分子[(PD-1,PD-L1, CTLA-4,CD80・CD86 pathway, CD28, Fas, Fas-L, CD33, CD11b, CD8, CD4,Treg(FOXp3), CD68, CD123(樹状細胞), CD11c(M1マクロアージ), CD163(M2マクロファージ)]に対する免疫染色を遂行中であるが、これらの抗体で同定できない浸潤細胞の存在が示唆された。コロナ禍の影響で海外発注の抗体の到着が遅れ技師の出勤できない期間があり、研究用の抗体の入手、免疫染色過程の遅れがあったが、Natural Killer Cell、Dendritic Cell のマーカーを入手した。これらの染色を加え、免疫チェックポイントの関係した筋炎の筋炎全体群の中での評価検討を遂行する。 3)多発筋炎・封入体筋炎の組織の発現解析に関しては,43例の封入体筋炎と6例の多発筋炎,9例のコントロール症例について次世代シーケンサ―で得た網羅的なmRNA発現データを得ており、組織の免疫チェックポイント分子の組織発現の解析をおこなっている.
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Strategy for Future Research Activity |
1)免疫チェックポイントの異常の関与したirAEとしての筋炎、慢性GvHDに伴う筋炎(亜急性増悪期の症例に焦点をあて)の臨床病理像解析の結果をまとめて論文化をめざす。 2)免疫チェックポイント機構に異常がある筋炎の筋炎全体群の中での評価のため、新たに入手した抗体を用い免疫染色を継続する。 3)現在遂行中の封入体筋炎と多発筋炎,コントロール症例の組織発現mRNAデータ解析を継続し、免疫チェックポイント分子の動きをmRNAレベルで解明し論文化をめざす。 4)CD8、PD-1、CD11c陽性細胞の非壊死筋線維へのアタック像は、その他の筋炎特異抗体が出る筋炎には認めず免疫チェックポイント分子関連の筋炎に特徴的である。現在までの検討の中で、irAEとしての筋炎や慢性GvHDに伴う筋炎では組織適合抗原の非壊死筋線維細胞膜の発現、CD8、PD-1、CD11c陽性浸潤細胞の出現は局所であるが、封入体筋炎と多発筋炎では、これらの所見はびまん性であることがわかった。そのためirAE筋炎と慢性GvHDに伴う筋炎(亜急性期群)についても組織を用いたmRNAの発現解析を行い、免疫チェックポイント分子の動きをmRNAレベルで解析し、封入体筋炎や多発筋炎との差異について分子レベルで解明をすすめる。
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Causes of Carryover |
irAE筋炎症例とコントロール症例の発現解析を2020年度に予定していたが、受託解析施設の受け入れが2020年度中にはできず、遅れ生じ予定が2021年度にずれ込んだ。これらの遅れのために次年度予算が生じた。2020年度未使用額と2021年度予算を合わせて免疫染色および組織よりmRNAを抽出しての発現解析に充てる予定である。
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